クラウド導入で電話営業をやめた不動産ベンチャーの話(2/2 ページ)
トラブルにも発展しがちな不動産投資の営業電話。読者の皆さんも受けたことがあるのでは。約9割が断られる状況の中、ならばと新規顧客向けの電話営業を全廃した不動産会社がある。
クラウドアプリケーションで集客を自動化
同社は不動産事業のほかに、女性向けの資産管理セミナーを行ったり、不動産投資に関するWebメディアも展開したりしている。このほか、出稿しているWeb広告なども合わせ、その顧客リストをクラウド上で統合。顧客の属性に応じてメールなどで情報発信を行い、アポイント獲得を目指すデジタルマーケティングを始めたのだ。
こうしたデジタルマーケティングによる集客は営業部門ではなく、企画部門が行っている。アポイントを取得した後は、契約までのプロセス管理や購入後の関係構築を、トップ営業のノウハウを基にシステム化。業務の効率化とスキルアップを視野に入れている。
新たなプロモーションの構築には、「Oracle Social Cloud」や「Oracle Eloqua」、そして「Oracle Sales Cloud」といったマーケティング支援のクラウドアプリケーションを利用している。Web上の活動だけで“見込み客”を生み出せるようになり、1人あたり1日約500人にかけていた新規の営業電話がゼロになったのだ。
電話営業をやめた効果はさまざまだ。風評が減ったほか、早期離職者が目に見えて減り、求人も増えたという。
「およそ9割断られる電話営業は、精神的につらいという人も多いです。これをなくすことで、早期離職者は20人に1人か2人くらいにまで減りました。新規の電話営業がないということで、就活生にも人気が出ています」(國師さん)
また営業プロセスをシステム化したことで、営業全体のレベルを底上げできたのも大きな効果という。これまでは各営業の力量によって、商談を行える案件数に差ができてしまい、優秀な人はますます伸びる一方、そうでない人は伸び悩む原因になっていた。営業全体でスキルの差が開きやすかったのだ。
「システム化をしたことで、各営業の接客機会を均等にすることができました。やはり営業が育つのに必要なのは現場での商談経験です。ノウハウを共有できるようになったことで、これまでより新人のレベルアップがとても早くなったように感じます」(國師さん)
土地に限りがあることから、首都圏では新築よりも中古物件の流通が増えており、「将来性のあるマーケットだ」と國師さんは胸を張る。自動化できるところはSaaSやAIを使い、本当に人間が必要な業務にリソースを集中していく。不動産業界でなくとも、Fan'sのIT戦略が参考になる企業は多いだろう。
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