日本マイクロソフトがクラウド売上比率にこだわる理由:Weekly Memo(2/2 ページ)
日本マイクロソフトが、直近の四半期で、全売上高に占めるクラウド比率がおよそ5割になったことを明らかにした。同社がかねてこの比率にこだわってきたのには理由がある。
理由2:日本マイクロソフトを変革するため
そして、平野氏がクラウド売上比率50%にこだわってきたもう1つの理由は、50%達成に向けた活動によって「日本マイクロソフトを変革する」ためだ。実は、同氏はこの点について今回の会見で自ら触れていない。そこで、まずはこの話の背景を説明しよう。
さかのぼって、2017年1月に同社が開いた2017年度中間期にあたっての事業説明会。その場で平野氏は次のように述べた。
「クラウド売上比率を50%にすることが大切なのではない。肝心なのは、50%になると当社自身がどうなるかだ。クラウド事業が全売上高の半分を占めるようになれば、導入されたお客さまに継続して使っていただくための努力がなお一層不可欠になる。継続して使っていただくために、お客さまとどう対話していけばよいのか。パートナー企業とどう協業していけばよいのか。そうした取り組みをメインストリームの事業としてさらに磨き上げていく必要がある。50%という数字は目標だが、私としてはそうした取り組みを、メインストリームの事業としてしっかり行っていけることをアスピレーションとして持っている」
つまりは、クラウド売上比率が50%になれば、日本マイクロソフトをクラウドサービスプロバイダーとして強じんな体質の企業に変革できる、というのが平野氏の狙いである。
今回の会見ではこの話への言及がなかったので、質疑応答で「クラウド売上比率がおよそ5割になって、日本マイクロソフトは変わったか」と聞いてみた。すると同氏は、「だいぶ変わってきたと思うが、まだまだ私自身思うところがあるので満足していない」と答えた。「思うところ」とはいったい何か。そう食い下がったところ、同氏は図3を示しながら次のように答えた。
「われわれのビジネス市場規模は、かつての『Windows 95』によるデスクトップからモバイルとクラウド、さらにはインテリジェントクラウドとインテリジェントエッジによるIoT(Internet of Things)へと、100〜190倍に拡大している。その中でお客さまに最適な提案を行っていくために、やらなければならないことはまだまだたくさんある」
そして、こう続けた。
「IT業界はこれまでにも増して変革し続ける企業だけしか生き残れなくなってきている。われわれもそれを肝に銘じて、拡大するビジネス機会にどんどんアプローチしていきたい」
もはや、クラウド売上比率50%を巡る話は、平野氏にとって経営変革への1つの通過点なのかもしれない。ならば、次はどんなフラグを掲げるのか、注目しておきたい。
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