アクサ生命の「デジタル変革」を託された女性、その異色のキャリア:【特集】Transborder 〜デジタル変革の旗手たち〜(3/3 ページ)
企業のデジタル変革に注目が集まる中、2010年ごろからその取り組みを続けてきた企業がアクサ生命だ。2014年に変革を指揮する部署として設置した「トランスフォーメーションオフィス」でトップを務める不動さんは、長く米国に在住していたなど、異色のキャリアを持っている。
まるで“指揮者”のよう――トランスフォーメーションオフィサーの仕事
こうして2014年、不動さんはトランスフォーメーションオフィス本部の本部長(トランスフォーメーションオフィサー)となった。ビジネスの世界とITの世界を橋渡しする人間として、こうしたスキルや経験を身につけたことが評価されたのだろう。海外で長く働いてきたことも要因の1つかもしれない。
トランスフォーメーションオフィスのメンバーは11人、そのうち約半数の6人が女性という。デジタル化を進める各部門のプロジェクトや施策を計画し、テクノロジーとそれを利用するオペレーションを設計、推進することがそのミッションだ。
「まだ始まっていない施策の事前計画を練り、それぞれの施策が円滑に進むように、ある程度のクロスチェックや部署間の連携を行います。小さなチームなので、チームメンバーで現状を分析し、今何をすべきか――ITの開発なのか、プロセスの改善なのか、さらに、新しいITやプロセスに必要な組織や役割の見直しなのか――などを検討して進めています」(不動さん)
こうしたプロジェクトや施策では、どうしても関係者は多くなる。大きなものでは、8つの部署を巻き込むものまであるという。
例えば「ユーザーが営業に話をしても、コールセンターに話をしても、どこへ電話をかけても、『自分のことを知ってくれているな』と感じられるようなサービスを提供したい」という目標があったとしよう。営業社員とのやりとりでユーザーが何か言い忘れて、コールセンターに電話をかけたときに、うまく引き継いで対応できるようにする。そんなシナリオだ。
そのためには、両方の部署に共通するデータベースの開発が必要だ。営業社員が持っているユーザーの情報に、コールセンター側が電話番号だけでアクセスできなければ意味がない。営業が使いやすいツール、コールセンターがアクセスしやすいデータ、そしてデータベースをどう構築していくのかを検討することになる。
このように各部署が担う施策を、関係する部門がどういった依存度で動くのかまでを精密に見ながら、そしてスピードをコントロールしながら、投資の配分も含めて調整していく。こうした調整は「まず、お互いの依存関係をはっきりさせることがポイント」だと不動さんは捉えている。
お互いのゴール(目標としているシステム)は一致しているので、タスクの奪い合いにはならない。フェーズごとにどの部門がリードするかを見極めればいい。もちろん、1つの作業に遅れが出れば、他部署に影響するリスクはあるが、そこも含めて調整するのがトランスフォーメーションオフィサーの役割だ。
「施策を推進する部門責任者と、定期的に個別ミーティングをしています。そういうところで課題を共有しますね。ときにプロジェクトは遅延が発生します。遅延は他のプロジェクトへのインパクトだけではなく、使い切れない予算が出るなど、予算へのインパクトも大きい。そういう細かい調整も個別で行います」(不動さん)
不動さんの役割は、さながら“指揮者”のようだが、デジタルトランスフォーメーションにおいて、ビジネスに合わせたテクノロジーと人の在り方、業務プロセス、働き方という要素が同じペース、リズムで変わっていくことが重要だと彼女は話す。「ツールだけが変わっても、会社は変わらない」――。これが、アクサ生命がデジタル化の取り組みを進める中で得た教訓だからだ。(後編へ続く)
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