Microsoftが描く「デジタルトランスフォーメーションの世界観」:Weekly Memo(2/2 ページ)
今や企業におけるIT活用の最大のキーワードである「デジタルトランスフォーメーション」。その「世界観」を日本マイクロソフトから聞く機会があったので考察しておきたい。
全業種にチャンスがあるデジタルトランスフォーメーション
このインテリジェントクラウドとインテリジェントエッジによって進むデジタルトランスフォーメーションは、ビジネスの観点からすると何をもたらすのか。
平野氏は図2を示しながら、Microsoftとしては「社員にパワーを与える」「顧客とつながる」「業務を最適化する」「製品やサービスを変革する」といった4つの領域と捉え、それらを実現するてだてとして、自らが得意とする4つのソリューションを提供していくと説明。それが「モダンワークプレース」「ビジネスアプリケーション」「アプリケーション&インフラストラクチャー」「データ&AI」である。
実は、これまでの話は、平野氏が1カ月前の8月1日に開いた日本マイクロソフトの経営方針会見でも説明した内容を、今回のイベントに向けてデジタルトランスフォーメーションを前面に出す形で整理し直したものだ。経営方針会見の詳細な内容については関連記事をご覧いただくとして、これまでの話を踏まえて、筆者がぜひ取り上げたかったMicrosoftの世界観を最後に紹介したい。
それは、デジタルトランスフォーメーション市場の見方である。図3に示すように、同社はまず1995年当時の「PC+Windows」市場が1400億円規模としたうえで、2005年当時の「クライアント+サーバ」市場は1兆4400億円(PC+Windowsの10倍)、「モバイル+クラウド」市場は14兆4000億円(同100倍)、そしてデジタルトランスフォーメーション市場は26兆円(同190倍)になると予測している。なお、図の中には明記されていないが、モバイル+クラウドは2015年の実績、デジタルトランスフォーメーションは2020年の予測である。
実は、この話も平野氏は先の経営方針会見で触れており、図4のようにグローバル市場と合わせて説明していたが、日本市場だけを図3と見比べると、表記上の大きな違いが1つあるのに気付く。インテリジェントクラウド&インテリジェントエッジがデジタルトランスフォーメーションに入れ替わっているのだ。つまり、Microsoftにとってインテリジェントクラウド&インテリジェントエッジは、デジタルトランスフォーメーションへの取り組みそのものなのである。
この言葉の入れ替えで筆者が感じたのは、ベンダー視点からユーザー視点への転換。細かいところに見えるが、非常に重要なポイントである。この点については率直に評価したい。それもあって、デジタルトランスフォーメーションが改めて有望な潜在市場であることが分かった。平野氏は26兆円についてこう語っている。
「この数字が見込めるのは、従来のIT予算だけでなく、例えばAIが広範囲に使われるようになって、さまざまな設備投資や事業部予算も対象にビジネスチャンスが広がる可能性があるからだ。従って、当社はこの市場に向けて全力で取り組んでいく」
大きなビジネスチャンスは何もITベンダーだけでなく、全業種にありそうだ。デジタルトランスフォーメーションの醍醐味はまさにそこにある。
関連記事
- 「Weekly Memo」記事一覧
- MicrosoftのAI技術は今、ここまで来ている
日本マイクロソフトがパートナー向けのカンファレンス「Japan Partner Conference 2017」で、同社のAI技術の最先端を披露した。認識技術では人間を超えるものも出てきている。 - 事業予測にAI活用も デジタル改革に“本腰”のMS平野社長、2018年度のビジョンは
日本マイクロソフトの平野拓也社長が、2018年度の事業方針を説明。事業予測にAIを活用しビジネスの精度を向上しつつ、インテリジェントクラウド&インテリジェントエッジを中核に据えたクラウド戦略や、新たなゲーミングビジネス戦略などを示した。 - Microsoftの「AIの民主化」に込められた意味
ロンドンで開催されたイベント「The AI Summit」にて、Microsoftは「AI for Earth」という新たなプログラムを発表した。同社は近年さまざまな場で「AIの民主化」をうたっているが、ここでの発表内容も踏まえ、そこに込められた意味を考えてみよう。 - 日本マイクロソフトがクラウド売上比率にこだわる理由
日本マイクロソフトが、直近の四半期で、全売上高に占めるクラウド比率がおよそ5割になったことを明らかにした。同社がかねてこの比率にこだわってきたのには理由がある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.