そのWebページ、“みんな”が読めますか――企業が知るべき「Webアクセシビリティ」とは?:週末エンプラこぼれ話(2/4 ページ)
インターネットが当たり前のインフラになった今、「誰でも同じように情報にアクセスできる」というテーマに再び注目が集まっている。その1つが「Webアクセシビリティ」だ。最近ではクラウドがその普及の後押しをしているのだという。
インフォ・クリエイツは公益財団法人日本適合性認定協会(JAB)の認定を受けたWebアクセシビリティの検証機関だ。日本IBMの研究開発拠点だった大和事業所から独立した会社で、2001年にWebアクセシビリティ事業を開始した。政府から日本IBMへWebアクセシビリティについて問い合わせが来た際に、白羽の矢が立ったのがきっかけだという。
まず同社が手掛けたのは、Webページが規格通りに作られているかをプログラムで確認するチェックツールの開発だ。しかし、プログラムで確認できる項目は「画像の代替テキストが入っているかどうか」など、全体のわずか4〜5%にすぎない。それ以外は目視で検査することになるが、手間がかかる分、検査員の確保が難しい。
そこで同社はオンライン研修サービス「ICC(InfoCreate College)」を作り、検査員の育成を行っている。3段階の検定試験を用意し、合格者に認定を出しているのだ。現在、インフォ・クリエイツが認定し、契約している検査員は38人。Webサイトのアクセシビリティを検証し、検査証を発行している。検定業務には、障害者が在宅であたっているという。
行政や企業の「Webアクセシビリティ」への取り組み
「情報アクセシビリティの確保」を掲げているのが政府ということもあり、Webアクセシビリティへの対応を積極的に進めているのは、中央(地方)省庁が中心だ。民間企業では、味の素の商品情報サイト、NTTビジネスアソシエ東日本などの検査に関わっている。
例えば総務省の場合、インフォ・クリエイツはWebアクセシビリティの保守業務を請け負っており、その中で検査も行っている。同省の場合、適合レベルAAに準拠しており、その結果を明示するとともに、適合証明書を掲載している。
「私たちが担当している中央省庁だけで10万近いページがあり、1ページを目視で確認するのに、約1000カ所チェックする項目があります。総務省は年間で2000ページくらいですね。省庁によっては他社の検査を採用しているケースもあります。検査証を公開していないお客さまもいますし、第三者機関の証明書を提示しないケースもあります」(加藤氏)
具体的な検査項目は、達成基準チェックリストとして公開されている。音声や画像など、非テキストコンテンツに関するものや、音声および映像に限定したもの、キャプション、色彩、コントラストなど多岐にわたる部分を検査する。
例えば、画像にしても1つひとつ画像を見ながら、画像で示している内容がきちんと代替テキストで入っているかどうかを確認していく。意外と見過ごされているのがページタイトルだ。各ページにユニークなタイトルをつける必要があるが、いくら階層をたどってもえんえんと同じページタイトルが続くケースも少なくない。これは、視力に障害がある人にとっては非常に不便な点となる。
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