ロボットが障害者の雇用を増やす?:Pepper活用事例
「ロボットが仕事を奪う」とよく言われているが、ロボットの力を借りることで障害者の可能性が広がるかもしれない――。パーソルチャレンジがPepperを活用した障害者雇用の実証実験を始めた。
ロボットの力を借りることで障害者の可能性が広がるかもしれない――。
障害者の雇用支援を手掛けているパーソルチャレンジは7月21日、都内で開催された「SoftBank World 2017」で、「Pepper」を活用した障害者雇用の実証実験を紹介した。
受付・案内業務にPepperを活用し、身体障害や発達障害を抱えるスタッフ(1〜2人)に、そのPepperを遠隔操作するオペレーター業務を任せるというもの。
専用アプリ「VRcon for Pepper」を通じて、オペレーターはPepperに搭載されたカメラから来客を映像で確認。Pepperを動かして社内を案内をしたり、オペレーターがキーボードで入力した内容をPepperに喋らせて会話することができる。足に障害があるなど出社が困難な障害者に、自宅からでもできる仕事を増やす狙いがある。
障害者の不得意な部分をロボットで補う
同社の雇用支援事業部、佐藤謙介部長は「障害者の中にはコミュニケーションスキルに課題がある人も多く、そのため任せられる仕事が少ないという社会問題がある」と説明する。
精神障害や発達障害を抱える人の場合、コミュニケーションを取ること自体に大きなストレスを抱えるケースが多く、人と接する仕事に苦手意識を持っているという。しかし、多くの日常業務ではコミュニケーションを必要とするため、任せられる仕事が限られてしまう。
国は企業(従業員数100人以上の規模)に対して、障害者を従業員全体の2%以上雇用することを義務付けているが、前述した課題に企業側も悩んでいるのが現状だ。
同社は「対面でのコミュニケーションは苦手でも、チャットなどのITツールを介したコミュニケーションなら自然にできる人は多い」として、障害者の不得意な部分をロボットで補うことで、できる仕事を増やしていけると考えている。
「当社には、面接や就職相談を受けに来る人が多い。単に受付の電話で機械的に対応をするのではなく、人型のロボットが対応することで来客を楽しませたり、リラックスさせることができる。人が操作をしているので、(待ち時間などに)状況を理解した自然な会話も可能になる。人とロボットが不得意な部分を補い合うことで良い効果を発揮できる」(佐藤氏)という。
今後は、受付・案内業務だけでなく、店舗における接客業務などにも応用できるとして、自社で得たノウハウを他社にも横展開(採用コンサルティング)していくとしている。
「ロボットが障害者の可能性を広げる」
佐藤氏は「ロボットが人の仕事を奪うとよく言われているが、ロボットの力を借りることで障害者の可能性が広がるかもしれない」と話す。
「遠隔操作の仕事なら、移動が困難な人でも自宅から業務ができるようになる。また、ロボットさえ現場にいれば全国各地の業務に対応できるので、仕事の幅も広がる。ロボットと協働することによって、障害者のできる仕事を増やしていきたい」(佐藤氏)
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