CIOはデジタル変革にどう立ち向かうべきか:Weekly Memo(2/2 ページ)
いよいよ企業のデジタル変革が本格化する中、CIOはどのような役割を果たすべきなのか。CDO(最高デジタル責任者)とはどう違うのか――。最新調査からその役割について探った。
デジタル化の目的によって異なるCIOの立ち位置
一方、企業のデジタル戦略を推進するリーダー役として、かねて注目されているのがCDO(最高デジタル責任者)である。部門を横断して社内外のデジタルビジネスを統括することから、その仕事はCEOの領域であるビジネス戦略、CIOが担うIT、そしてCMO(最高マーケティング責任者)が担うマーケティングの3つを組み合わせたイメージだ。
KPMGコンサルティングのCIO調査によると、企業組織内にCDO職か、その役割に相当する役職を設置しているかとの問いに対し、図3に示すように回答者の25%が「設置している」と答えている。一方で、69%が「設置していない」と答えていることから、企業のデジタル化への取り組みは実質的にCIOが担っているケースが多いといえそうだ。
ただし、CDOも2016年で18%だった割合が2017年は25%に伸長。とりわけ、IT予算が年間2億5000万ドル超の大企業では、2016年で36%だった割合が2017年では51%に伸びており、デジタル化の進展に伴ってCDOを設置する企業も増えていきそうだ。
ちなみに、業種別でCDOを設置している割合が高いのは、放送/メディア46%、広告35%、小売32%、通信31%など。逆に低いのは、公益事業16%、製造18%、エネルギー18%といったところだ。ただし、広告はデジタルそのものが商品であることから、CDOの役割も他業種とは異なっているようだ。
最後に、デジタル変革の課題についての調査結果を取り上げておきたい。図4は、デジタル化を成功させるうえでの最大の課題を聞いた結果である。それによると、「新技術を導入することの難しさ」「投資利益率(ROI)の達成」「適切な人材の確保」などを抑えて1位になったのは、「変革に対する抵抗」である。どうやら、この課題はこれまでのIT化でも、これからのデジタル化でも変わらないようだ。
そこで、会見の質疑応答で、改めて「理想的には、企業はCIOとは別にCDOを設置したほうがよいのか」と聞いてみた。すると、松本氏は次のように答えた。
「デジタル化する目的によって異なる。例えば、社内業務のプロセス改善や生産性向上が目的ならCIOがデジタルリーダーも兼ねてやるべきだ。しかし、新規事業の開拓や革新的な製品・サービスの開発が目的なら、それにふさわしい人材をCDOに据えて、CIOは基本的に関わるべきではない」
同氏のこの見解は、CIOでさえも変革に対する抵抗勢力になってしまう可能性があるということだ。できうるならば、CIOはそれを心得たうえで、デジタル化についてはCDOをサポートする立場になるのが望ましい。なぜならば、CIOには先述したように全社的な観点からの明確な役割があるからだ。そして、CEOがそのCIOやCDOの後ろ盾になることも非常に重要である。このタッグを強力に組めれば、変革に対する抵抗へも解決策を見いだせるはずである。
関連記事
- 「Weekly Memo」記事一覧
- 敵は社内にあり! 抵抗勢力との向き合い方
働き方改革や業務改革などの変革を起こそうとすると、必ずぶつかる“抵抗勢力”にどう向き合い、どのようにプロジェクトを進めていけばよいのか――数々の企業改革支援を手掛けてきた著者の近著から、そのエッセンスを紹介します。 - コレ1枚で分かる「デジタルトランスフォーメーションを支える5つのテクノロジートレンド」
デジタルトランスフォーメーションが進みゆく未来、ITビジネスはどのような変化をしていくのか――ビジネス変革を推進するクラウドネイティブとアンビエントITの流れを軸に、キーとなる5つのITテクノロジートレンドについて解説します。 - アクサ生命が気付いた「デジタル変革」の核心――それは人とITの“共存”
2010年ごろから「デジタルトランスフォーメーション(変革)」に挑んでいるアクサ生命。取り組みの中で気が付いたのは、ツールだけを変えても会社は変わらないということだ。人とテクノロジー、両者を調和させるバランスが重要なのだという。 - Microsoftが掲げる「デジタル変革に必須の4要素」とそれを実現するもの
米Microsoftのパートナー企業向けイベント「Microsoft Inspire 2017」が7月9日から13日まで開催されている。10日にはサティア・ナデラCEOが登壇する基調講演「Vision Keynote」が行われ、Microsoftの新年度の戦略などを発表した。 - NTTデータが予測、社会を激変させる「8つのITトレンド」
NTTデータが人とシステムの関係を軸にしたITトレンドについてまとめたレポートを発表した。システムインテグレーターの視点による興味深い内容なので紹介しておきたい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.