AIファースト×MR――MicrosoftがDX市場に送り込む“刺客”の実力は?:Microsoft Focus(1/2 ページ)
米Microsoftのサティア・ナデラCEOは、2017年9月25から開催された「Microsoft Ignite 2017」で、デジタルトランスフォーメーション(DX)をリードする新たなコンセプトとして、「AIファースト」を打ち出した。
米Microsoftのサティア・ナデラCEOが新たなメッセージとして使い始めた言葉が、「AIファースト」だ。
同氏は、2017年9月25日から29日(現地時間)の5日間、フロリダ州オーランドで開催したITリーダーとITプロフェッショナル向けのテクノロジーイベント「Microsoft Ignite 2017」の基調講演で、AIファーストをキーワードにしながら、「モダンワークプレース」「ビジネスアプリケーション」「アプリケーション&インフラストラクチャ」「データ&AI」という4つの観点から、その取り組みを説明した。
AIファーストで何が変わるのか
ナデラCEOが、戦略の転換期にこうしたメッセージを打ち出すのは初めてではない。これまでにも、「モバイルファースト、クラウドファースト」という言葉を打ち出したことがある。これは、スティーブ・バルマー氏時代の「デバイス&サービスカンパニー」の姿勢を一歩進め、さまざまなモバイルデバイスに対してMicrosoft製品を提供し、さらに全ての製品をクラウドから提供する姿勢を表したものだ。実際、これ以降のMicrosoftの製品戦略は、大きく変化した。iPhone向けにMicrosoft Officeを無償公開するなどの動きを開始したのもこの方針を打ち出してからだ。
振り返れば、2014年2月にCEOに就任したナデラ氏が最初の3年間で目指した姿は、「モバイルファースト、クラウドファースト」の企業への転換であったといえよう。ナデラCEOは、「モバイルファーストとクラウドファーストの世界において、独自の強みを持っているのがMicrosoft。この世界におけるプロダクティビティソリューションとプラットフォームの提供企業になる」と語っていた。
だが、2017年に入ってから、これが「インテリジェントクラウド、インテリジェントエッジ」という言葉に置き換わった。
ナデラCEOは7月の「Microsoft Inspire 2017」で、「Microsoftは、モバイルファースト、クラウドファーストの企業から、インテリジェントクラウド、インテリジェントエッジの企業に変わりつつある」と発言。「デジタルテクノロジーの広がりによって、トランスフォーメーションが起き、あらゆる業界に影響を及ぼしている。全ての製品やサービスがデジタルに関係することで、われわれの目の前には4兆5000億ドルもの市場が広がり、これまでにないチャンスを得ることにつながる」と語り、インテリジェントクラウド、インテリジェントエッジへの取り組みによって、MicrosoftをはじめとするプラットフォーマーといえるIT企業が置かれる立場が変わり、社会における役割が増すことを示している。
実はこの説明のなかでナデラCEOは、「全ての領域にAIが活用され、インテリジェンスを生み出すことになる」とコメントしており、それが今回打ち出した「AIファースト」という言葉につながる。
AIファーストが生み出す新たな体験でビジネスを変革
基調講演では、「例えば自動運転車は、1秒間に4GBものデータを生む。さらに、スマートファクトリーやスマートシティーなどでも、エッジから多くのデータが生まれ、データ量はますます大きなものになってくる。ここで重要な意味を持つのがAIであり、機械学習である。企業や、大学の研究機関や医療機関は、AIを活用することで、デジタルトランスフォーメーション(デジタル変革)に挑む段階にある」と説明。「インテリジェントクラウド、インテリジェントエッジにおけるAIの活用は将来のものではなく、すでに起こっている。2016年の1年間で最も大きな進歩を遂げた技術がAI。パートナーや開発者の創造力によって『Microsoft 365』『Dynamics 365』『Microsoft Azure』に融合されたミックスドリアリティー(MR)とAIの可能性が最大化されることで、変革が達成され、世界に影響を及ぼすことを大いに期待している」と語った。
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