AIファースト×MR――MicrosoftがDX市場に送り込む“刺客”の実力は?:Microsoft Focus(2/2 ページ)
米Microsoftのサティア・ナデラCEOは、2017年9月25から開催された「Microsoft Ignite 2017」で、デジタルトランスフォーメーション(DX)をリードする新たなコンセプトとして、「AIファースト」を打ち出した。
Microsoft IgniteではMicrosoft 365について、新たなサーチ機能や、「Microsoft Teams」を中心とした“インテリジェントなコミュニケーション”のビジョンを発表。サーチ機能については、AIと機械学習を使用することで、より関連性が高い結果を提供できるようになることや、「Bing for Business」のプライベートプレビュー機能を使った“インテリジェントな検索体験”を提供することなども説明した。
また、「Microsoft Dynamics 365」のAIソリューションによって、エンタープライズ分野でのAI活用が始まっていることを強調。例として、米HP.incがカスタマーサポートにAIを活用し、効率的な問題解決を実現していることに焦点を当て、「HPは、機械学習を取り入れたDynamicsを活用することで客の総合満足度を向上させ、より短時間で多くの要求に応えられるようにしている」と紹介した。
「今後は、AIファーストのアプリケーションを活用することが大切である。それによって、全ての企業のビジネスを変革させたい」(ナデラCEO)
AIとMRで、不可能を可能に
AIファーストとともに、もう1つ新たに打ち出した言葉が、「ミックスドリアリティーファースト」である。
これについては、自動車メーカーの米Fordが、MRデバイスである「HoloLens」を使用し、クレイモデルを使用していた従来の開発環境から、MRによる開発環境へと移行している事例を紹介。離れた場所にいるデザイン部門と開発者部門の担当者が、互いに実際のクルマの前にいるような環境で同時に作業を行う体験を示してみせた。
ナデラ氏は、「MRの世界は、HoloLensという1つのデバイスだけによって生み出されるものではなく、Microsoft TeamsやMicrosoft 365、Azureなどの組み合わせによって実現するものであり、新たなレベルのコラボレーションと体験が可能になる」と、ミックスドリアリティーファーストは、これまでにない仕事の仕方を実現することを強調した。
「ビジネスで必要なのは、テクノロジーを使って従業員の力をいかに発揮するか、顧客の満足度をいかに高めるか、それによってビジネスモデルをいかに変えるかである。われわれのコアのミッションは、エンパワーメントすることである。そして、不可能を可能にすることである。そのためには、AIファースト、ミックスドリアリティーファーストの取り組みが重要になる」(ナデラCEO)
Microsoft Igniteで発表した事例以外にも、数々の事例が進行中とのこと。今後、AIファースト、ミックスドリアリティーファーストによって実現する新たな事例に注目したい。
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