カードの不正利用もAIで暴く――JCBのデータ活用、その裏で活躍する分析チームの姿:システムと組織の両面で改革(3/3 ページ)
国産クレジットカードの草分け的存在であるJCB。最近では、カードの不正利用検知にAIを利用するなど、データ活用を進めている。膨大なデータを保有するクレジットカードをビジネスに役立てるため、システムと組織の両面で改革を進めているのだという。
「AI基盤」の構築を見据えるJCB、その狙いは?
クレジットカード企業では、与信プロセスの高度化、不正検知におけるパターン検出、画像処理、自然言語処理、チャットボットなど、ビッグデータやAIを活用した分析が役立つ業務は多い。AIについては、いくつかPoC(Proof of Concept)を行っていると箕谷氏は話す。
さらに、これまで分析の中心だった構造化データだけではなく、ソーシャルメディアやWebログのような、非構造化データを扱う分析の必要性が高まっていることを考慮し、JCBでは、AI基盤を構築しようとしている。箕谷氏は、さまざまな部門と議論を繰り返しながら、完成させる構えだ。
現時点では、AI基盤と既存のシステムの間に、データ基盤を配置する構成を考えているようだ。データ基盤は、AIを使った分析に必要な既存のシステムと互換性を持たせる。そして、AI基盤はデータ基盤から供給されたデータを使って分析を行う仕組みだ。
AIについては、「いろいろ試してから、最適なものを選ぶ環境を作りたい」という気持ちが強いと箕谷氏。さまざまな新しい技術があるので、PoCでどこに何が適用できるかを検証したいという。
また、意外なことにJCBではBIツールを導入していない。これまでの活動の中で、ユーザー部門がそれぞれに必要な可視化を行ってきたためだ。各部門が見ている数字を結合させ、全体としての可視化と最適化ができれば、ビジネス課題へのアプローチも変わるだろう。その分析精度が上がるほど、ビジネスは成長するはずだ。
「現場に行って、ユーザーの『困りごと』を聞き、優先順位を付けて解決していきたい」と話す箕谷氏。ツールの導入を急ぐことなく、最適化が可能な「“本当の意味での”BIシステムを作りたい」とJCBは考えているという。
昨今、クレジットカード事業者は、カードそのものの機能や、ポイント還元率、特典などよりも、付帯する「サービス」で差別化を図る方針に切り替えつつある。利益の減少を避け、新たなビジネスチャンスを――。ビッグデータや人工知能の活用は、クレジットカード業界にとって、ますます重要さを増していくだろう。
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