「iPhone X」と「スマートスピーカー」、買うのやめました:半径300メートルのIT(2/2 ページ)
この秋、話題の2つのデバイス「iPhone X」と「スマートスピーカー」。飛びつきたくなる気持ちを抑えて購入を見送った理由とは。
そしてもう1つ、手を出せなかったのが、Google HomeやAmazon Echoをはじめとする「スマートスピーカー」。ITmediaもいち早くAmazon Alexaのニュース読み上げに対応していて驚きました。
スマートスピーカーをはじめ、スマートフォンに搭載されているiOSのSiriやGoogleなどの音声関連機能は、デバイス単体で処理をしているわけではなく、音声データをネットワークを通じて送信し、クラウド上で処理をしています。私たちは、その音声データが各社に蓄積され、サービス向上のために活用されているということは知っておいた方がいいでしょう。例えば「Google マイアクティビティ」を見ると、これまで音声検索で使われた音声がそのまま記録されていることが分かります。
これだけなら当たり前のことといえますが、今後は、用途も拡大することが予想されます。その際に、「音声の履歴がベンダー側に保存される」という大前提を忘れないようにしたほうがいいと思うのです。
Googleは音声情報をはじめ、検索の文言などをGoogle マイアクティビティで確認することができ、削除することも可能です。この点はGoogleの個人情報に対する考え方が良く出ていて、素晴らしいと思っています。ただし、脆弱性を突かれて送信される情報を盗聴されたり、パスワードが盗まれてアカウント情報から盗み聞きされるリスクはありますので、スマートスピーカーもアップデートを行うこと、2要素認証を利用するなどアカウントの管理をしっかりすることをお勧めしたいと思います。
実はスマートスピーカーのサービスで、ちょっと気になったものがあります。それは声で銀行の残高を照会するサービス。私も使っている三井住友銀行が、Amazon Alexaのスキルを提供するというリリースが流れたのですが、それが「スピーカーに向かってパスコード4桁を話すことで、残高照会や入出金明細照会が声で確認できる」というものなのです。
これはスマートスピーカー自体の問題というより、「それをどう活用するか」という問題だとは思うのですが、かなり機微なパスコード情報を「声を出して」入力すること、そして機微な情報が「スピーカーで再生される」ことに関しては、恐らくユーザーでなくても少々不安に思うのではないでしょうか。
もちろん、ここで発声が要求されている4桁のパスコードは、キャッシュカードの暗証番号とは異なるものを設定できますし、そうすべきです。しかし、同じ番号や似たような番号を使ってしまうことも容易に想定できます。視聴覚障害者向けのサービスを想定している可能性もありますが、それならばWebサイトの音声読み上げを可能にするなど、Webサイトのアクセシビリティーを高める「Webバリアフリー化」にこそ、もっと力を入れるべきでしょう。
このようにいろいろと調べたり考えたりした末に、現時点では、「急いで買わなくてもいいかな」という判断をしたのですが、どちらも1年もたてば、サービスが洗練され、より便利で身近なものになるはずです。
「新しいもの好き」ならどんどん使ってほしいところですが、セキュリティ面を考えると、使い道がピンとこなかったり、既存の技術の方が信頼できるために手を出せなかった――というのが本音です。いや、もっと本音を言うと、どちらも欲しいのは欲しいのですが……。
著者紹介:宮田健(みやた・たけし)
元@ITの編集者としてセキュリティ分野を担当。現在はフリーライターとして、ITやエンターテインメント情報を追いかけている。自分の生活を変える新しいデジタルガジェットを求め、趣味と仕事を公私混同しつつ日々試行錯誤中。
筆者より:
2015年2月10日に本連載をまとめた書籍『デジタルの作法〜1億総スマホ時代のセキュリティ講座』が発売されました。
これまでの記事をスマートフォン、セキュリティ、ソーシャルメディア、クラウド&PCの4章に再構成し、新たに書き下ろしも追加しています。セキュリティに詳しくない“普通の方々”へ届くことを目的とした連載ですので、書籍の形になったのは個人的にも本当にありがたいことです。皆さんのご家族や知り合いのうち「ネットで記事を読まない方」に届けばうれしいです。
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