IoT、AI、セキュリティ、FinTech――次々とコンソーシアムを立ち上げる日本マイクロソフトの狙いは:Microsoft Focus(2/3 ページ)
IoT、AI、セキュリティ、FinTechと、次々にコンソーシアムを立ち上げている日本マイクロソフト。この取り組みを通じて、どのような形で企業のIT活用を支援しようとしているのか。
非競争領域の共通課題解決を目指す
そして、この流れで新たなコミュニティーとして設置したのが、「金融デジタルイノベーションコンソーシアム(FDIC)」だ。
2017年11月1日に設立された金融デジタルイノベーションコンソーシアムは、日本マイクロソフトと野村総合研究所が中心となり、金融市場におけるデジタルトランスフォーメーションの推進に向けたコンソーシアムと位置付けられるもの。「金融クラウド」の実用性に関する共同検証の実施や、リファレンスアーキテクチャの策定を通じて、金融機関の業務改善や業容拡大、国際競争力向上などを目指すとしている。
推進役を野村総合研究所が、事務局を日本マイクロソフトが務め、設立時にはインテック、インフォシスリミテッド日本支社、新日鉄住金ソリューションズ、電通国際情報サービス、日本システム技術、日本ビジネスシステムズ、日本ユニシス、ニューメリカルテクノロジーズ、FIXERが参加。日本マイクロソフトと野村総合研究所を加えて11社が名を連ねた。
野村総合研究所 執行役員 金融ITイノベーション事業本部の横手実副本部長は、「ベンダーだけでは解決できない問題があり、金融機関が持つ非競争領域における共通の課題を解決するのが狙い。今後、金融機関の参加も呼びかけ、地に足の着いたコンソーシアムにしていきたい」とする。
FDICでは、非競争領域と位置付けるセキュリティやコンプライアンス対応など、各社共通の検討課題について参加企業が情報を共有し、標準化のリファレンスアーキテクチャを設定することで、金融機関の業務改善や業容拡大を図り、工数の削減やIT投資の最適化、サービスリリースの短縮化による収益向上への貢献を目指すという。
具体的な活動として、「金融クラウド活用ワーキンググループ」では、金融クラウドの実用性に関する実証実験を実施。2018年3月に改訂予定のFISC安全対策基準におけるセキュリティやコンプライアンス対応への配慮などを図りながら、金融機関での利用要件を充足する柔軟で利便性の高いクラウド基盤の標準化を目指す。
また、「高度データ活用ワーキンググループ」では、金融機関における生産性向上や営業支援、顧客接点の強化、的確な規制対応など、高度なデータ活用によってデジタルトランスフォーメーションの推進に貢献することを目指す。
さらに、「新技術ワーキンググループ」では、AIやディープラーニング、ブロックチェーンといった新技術を活用することで、新たなビジネスモデルの開発などを狙った次世代金融プラットフォームの在り方を検討。ユースケースの確立や実証実験の実施、リファレンスアーキテクチャの確立を目指すという。
これらのワーキンググループは、3カ月に一度のペースで開催する予定だという。
日本マイクロソフト 執行役員常務 パートナー事業本部の高橋美波本部長は、「Microsoftがアジア13カ国の金融サービス業界を対象に行った調査では、デジタルトランスフォーメーションの重要性を認識していると回答した比率は81%に達し、IoT、AI、次世代コンピューティングといったテクノロジーに注目が集まっている。その一方で、サイバーセキュリティに対する不安がデジタルトランスフォーメーション推進への障壁となっている。こうした課題を解決するためにも、日本マイクロソフトは、今回のコンソーシアムを支援していくことになる」とした。
日本マイクロソフトでは、金融デジタルイノベーションコンソーシアムに対して、最新技術の共有や外部への露出、各コミュニティーとの連携、トレーニングカリキュラムの提供、パートナー企業への横展開などでの支援を行うという。
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