IoT、AI、セキュリティ、FinTech――次々とコンソーシアムを立ち上げる日本マイクロソフトの狙いは:Microsoft Focus(3/3 ページ)
IoT、AI、セキュリティ、FinTechと、次々にコンソーシアムを立ち上げている日本マイクロソフト。この取り組みを通じて、どのような形で企業のIT活用を支援しようとしているのか。
非競争領域の効率化で競争力を強化
FDICを設置した背景には、金融業界特有の課題がある。
野村総合研究所の横手氏は、「すでにIT基盤市場はクラウド市場に代わられ、広告市場はネット広告市場に代わり、自動車市場ではUberのような新たな勢力が登場することで、大きな転換を余儀なくされる状況が生まれている。いずれも、新たなテクノロジーを活用した企業によって新たな市場が構成され、あらゆる業界で10年を待たずに1兆円規模での産業構造変化が見られている」と前置きし、「これらの業界で変化の原動力になったのは、“供給者本位”から“利用者本位”への転換である」と指摘する。
利用者本位の転換として共通項にあげるのは、細かい単位でサービスが利用できる「小ロット」、必要なサービスがいつでもどこでも分かりやすく利用できる「迅速・簡便」、先行投資がなく、使ったら使った分だけ払う「変動費」、提供サービスが無駄なく構成され、低コストに利用できる「低価格」だ。
「こうした他業界で起こっていることが、金融業界でも同様の動きとなって表れようとしている。既存の金融機関は金融サービスの提供が主事業となっているが、FinTechという流れの中で、既存の金融機関ではない金融サービス提供事業者との戦いが始まっている。これは敵になるのか、味方になるのか分からない存在でもある。その一方で、働き方改革やセキュリティ上の課題などへの対応も求められている」(横手氏)という。
もともと金融業界は、最先端でITシステムを活用してきた。だが、多くの消費者がデジタルデバイスを活用しはじめる中、堅牢(けんろう)性や信頼性を求めることが重要な金融業界は、その流れに合わせていけなかった反省がある。
「金融業界は、いつの間にか顧客の流れに取り残され、ちょっと遅れた立ち位置にある。結果として、金融サービスは使いにくいということにもつながっている。今後は、金融業界以外では、もはや当たり前のように使われている技術を活用する必要がある。FDICでは、非競争領域での効率化を進め、競争力強化のための原資を捻出したい」と横手氏は話す。
非競争領域という点が対象であり、競争領域に直結するような銀行APIの活用などは対象外だ。「ビジネスの課題をどう解決するかといった点で議論を深めていく。セキュアで、より低コストで、共通的に利用できるようなものを目指す。そして、他業界で起こっている事例を金融業界にも適応したい」と語り、ホワイトカラーの働き方の可視化や、AIを活用したRPAによる業務の自動化、テレワーク環境の実現における課題解決などにも取り組むという。
関心が高い領域にフォーカス
日本マイクロソフトでは、今後も「Industry "x-Biz" Community」の取り組みを加速する考えだ。
今後の取り組みとして、三井情報やリクルートキャリアを中心に「HRTechコミュニティ」を、年内の発足を目指している。
日本マイクロソフトの平野拓也社長は、「コミュニティーは、必要なだけ増やしていきたい。業界を軸にして展開していくものや、IoTビジネス共創ラボのように業界の枠を超えたようなコミュニティーも想定している」と語る。そして、「デマンドの多いところ、関心の高いところ、あるいは悩みが多い分野を対象に増やしていきたい」とする。
平野社長は、「具体的にいくつまで増やすという計画はない。また、具体的にどんなコミュニティーを増やしていくのかも未定。その点では無計画」と笑いながら、「今までのように、WindowsやOfficeという切り口からのプッシュ型提案ではなく、インダストリーソリューションをドライブしたり、事業にインパクトを与えたりするためには、お客さまやパートナーの関心が高い領域にフォーカスしていく必要がある。それに基づいたコミュニティーを設置していきたい」と語る。
「Industry "x-Biz" Community」は、「地球上の全ての個人と全ての組織が、より多くのことを達成できるようにする」という企業ビジョンを掲げる日本マイクロソフトの新たな取り組みだといえる。
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