「顧客視点」という言葉に潜む“落とし穴”:榊巻亮の『ブレイクスルー備忘録』(1/2 ページ)
「顧客視点で考えるべき」――。よく聞く言葉だが、そこで思考停止していないだろうか。
この記事は榊巻亮氏のブログ「榊巻亮の『ブレイクスルー備忘録』」より転載、編集しています。
よく「顧客視点で考えろ」や「現場視点で考えろ」といった言葉を聞く。確かに顧客の視点は大事だろう。サービスや製品を買ってくれるのは顧客なのだから。
ただ、実際のところ、どうしたら具体的に「xx視点で考える」ことができるのだろうか。
「xx視点で考える」とは?
- どうしたら顧客視点で考えられるのか?
- どうしたら顧客の立場で考えられるのか?
そこまで踏み込んで考えているだろうか? 「ごもっとも」なんて言って、そこで思考停止していないか?
動きが想像できないキーワードは意味のない言葉になってしまう。体の動かし方がイメージできるまで、かみ砕く必要がある。
以前、参加したプロジェクトに、“伝説の営業マン”がいた。数千人の営業マンのトップを走っていた、名実ともにトップ営業マンだ。仮にKさんとする。その人とこんな会話をした。
K:今回のシステムは、営業のためのツールにならなければ意味がない。営業を楽にするものにしたいんだ。
私:なるほど、「顧客視点で考えて設計したい」ということですよね。
K:うーん。基本はそうなんですが、「顧客視点」と言ってる時点で顧客側に立ってないと思うんです。
私:?
K:「顧客の視点を持とう」と言った時点で「自分の視点とは別に、顧客の視点も持とう」という暗黙の前提が見え隠れする。これはあくまで「自分の立場」に立って考えているんだと思うんです。
私:なるほど、そう言われると……。
K:だから、「視点を持つ」んじゃなくて「顧客だったらどう感じるか?」と言うべきだと思うのです。「視点」なんていらない。リアルに「自分が顧客」だったら、をイメージする。顧客になりきる。それが、今回求められることだと思うのです。僕は営業のとき、必ずそうしてました。そうでなけば上から目線で「顧客視点で考えてやったぜ」という雰囲気が出てしまう。
私:なるほど。Kさんが伝説の営業マンだった理由を垣間見た気がしました。
K:そうですか?
私:Kさんは、何かを売るのではなく、「自分が顧客だったら何をしてほしいか」を考えていた。顧客自身になることで、相手が本当に求めているものを理解しようとしていたんですね。そんなふうに、利害抜きで、自分になりきって考えてくれる営業マンがいたら、その人から何でもいいので買いたくなっちゃいますよ(笑)
K:そうかもしれませんね。でも、私は本当に価値のあるものしか売りませんよ。自分が「顧客だったら」絶対に失敗したくないでしょ?
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