「顧客視点」という言葉に潜む“落とし穴”:榊巻亮の『ブレイクスルー備忘録』(2/2 ページ)
「顧客視点で考えるべき」――。よく聞く言葉だが、そこで思考停止していないだろうか。
“顧客視点”を持つ方法とは
徹底的に顧客に“なって”考える。「顧客“だったら”」がキーワードだ。――この考え方はとてもパワフルだと思った。
「顧客視点で」「経営視点で」「現場目線で」「全体最適視点で」なんて言葉はよく聞くけれど、結局どうすれば顧客視点で考えられるのか、実のところよく分からない。「顧客視点で考える」と号令をかけて満足し、「考えたつもり」になってしまう。
それを避けるための答えはシンプルだ。「自分が顧客だったら」と考えればいい。
この想像力が低いと、何をやってもダメだ。気が利かない人は、この想像力が低い。相手になりきることが大事だ。
超優秀な営業マンは、営業などしていなかった。誰よりも顧客に心を重ねて、誰よりも顧客自身になっていたのだ。想像できないなら、顧客になってみればいい。そのサービスを受けてみればいい。その仕事をやってみればいい。
そして、「顧客だったら」と考えると、途端に自分の利害を優先する思考から抜け出せる。
「顧客だったら何をしてほしいか」を考えた先に、自分が売っているものがハマるなら売ればいい。そうでないなら、押し売りするのではなく、「僕のサービスは合いませんね」とハッキリ伝えた上で、ニーズを満たせそうなサービスをよそから探してきて伝えてあげればいい。自分なら、そうしてほしいはずだから。
この考え方は、今でも僕の基本スタンスになっている。顧客に心を重ねる。顧客より顧客のことを考える。そして顧客にとって正しいことをする。その結果、選ばれるのが僕らのビジネスにならなくたって全く問題ない。
実は、これは、ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズのポリシーにもなっている。
- 「自社の利害は横に置け。顧客に取って正しいことを追求せよ」
こういうふうに仕事ができるのは、気持ちがいいものだ。
著者プロフィール:榊巻亮
コンサルティング会社、ケンブリッジのコンサルタント。一級建築士。ファシリテーションとITを武器に変革プロジェクトを支援しています。
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