Excelマクロで年間35万時間を削減、それでも三井住友海上がRPAを導入した理由:【特集】Transborder 〜デジタル変革の旗手たち〜(3/5 ページ)
金融関連業界を中心に導入が広がりつつあるRPA。アクセンチュアと協力してRPAを導入した三井住友海上もそんな企業の1つ。しかし、同社はもともとExcelマクロを使った業務自動化を進めていた。彼らがExcelマクロに加えてRPAを導入した理由はどこにあるのか?
アクセンチュアが三井住友海上に提案したのは、RPA製品ではなく、作業ログの分析ツール。当時、PC操作の自動化を内製のワンクリックツールで実現していたこともあり、RPA製品に優位性を感じることができなかった近田さんだったが、ログ分析の提案には「これだ! と思った」という。
PC業務のログを解析すれば、今まで声を上げていなかった人たちの業務を効率化できるかもしれない――。近田さんはシステム部門の協力を得て、本社部門で働く40人のPCに操作ログツールを入れ、2017年1月からログの収集を始めた。
その後、2カ月ほどで1566時間分のログが集まり、アクセンチュアと共同で約30種類の業務について、ヒアリングと分析を行ったという。その結果、全業務時間の18%程度がロボット化できるという結論が出た。
ログ分析について、「社員の協力を得るのは難しくなかった」と近田さんは言う。1クリックツールが結果を出していたため、業務自動化に対して経営も現場もポジティブな反応をする人がほとんどだったためだ。この結果を受けて、4月から対象を120人に拡大、再びログ分析を行いつつ、本格的にRPA導入を検討し始めたという。
RPA導入で気を付けるポイントとは?
近田さんがRPAソリューションを検討する際に重視したのは以下の2点だ。
- 自動起動ができること
- 構築にプログラミングスキルが必要ないこと
三井住友海上の場合、既に存在しているExcel VBAの1クリックツールとRPAの共存を図る必要があった。Excelファイルを開き、ボタンを押すという操作を自動化する――端的に言えば、1クリックツールを自動化するための機能を求めたのだ。
また、開発やメンテナンスを考えると、必ずしもプログラミングスキルが必須ではない環境で開発できるのがベターだ。そういった観点でさまざまな製品を比較した。
「最終的には、サーバ型とデスクトップ型でそれぞれ『Blue Prism』と『UiPath』という製品を採用しました。RPAソリューションにはさまざまなものがありますが、それぞれ長所も短所もあります。会社の業種や業態によって、最適な製品は異なるでしょう」(近田さん)
製品を選定し、PoCライセンスでのテスト試作に入った近田さんたちだが、そこで思わぬ問題に直面した。それはRPAの問題ではなく、社内のシステム権限だった。
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