Excelマクロで年間35万時間を削減、それでも三井住友海上がRPAを導入した理由:【特集】Transborder 〜デジタル変革の旗手たち〜(4/5 ページ)
金融関連業界を中心に導入が広がりつつあるRPA。アクセンチュアと協力してRPAを導入した三井住友海上もそんな企業の1つ。しかし、同社はもともとExcelマクロを使った業務自動化を進めていた。彼らがExcelマクロに加えてRPAを導入した理由はどこにあるのか?
RPAを動かす際に会社のシステムにログインする必要があったが、そのために社員IDが必要だったのだ。ロボット専用のIDを取得し、システム権限を付与しなければならなかった。社内システムの権限は、組織や役職、職務レベルにひも付いており、かなり複雑だ。セキュリティの観点から、特定の部署以外はアクセス不可というシステムもある。この処理が大変だったという。
「システム部門の社員も、当社業務効率化につながるということで前向きに捉え、導入検討に積極的に関与してくれました。その結果、一つ一つ課題を解決していくことができたのだと思います。これらの経験を踏まえ、今はロボットが扱うシステムと与える権限をまとめた表をシステム部門と一緒に作ろうとしています」と近田さん。
ソフトウェアロボットとはいえ、一社員のように扱う必要が出てくるのは、RPA導入の大きなポイントになる。ロボット専用の権限を付与したIDをどう管理するのか。これは今後もつきまとう話だろう。
開発環境と本番環境の差に悩まされたこともあった。本番さながらの環境ということで、実在する社員のIDを使ってテストしたところ、目的の業務と全く関係ないタスクを通知するポップアップメッセージが出てきてしまい、動作が狂ってしまったという。人間が操作を行う場合、こうした多少の差異(アクシデント)は問題ないが、RPAソリューションでは、それがロボットの動作停止につながってしまうのだ。
RPA導入で得られる効果は、大きく2つに分けられる
こうしたさまざまな問題を乗り越え、PoCライセンスでの効果が把握でき、2017年11月に本格導入に踏み切った。その効果について、近田さんは次のように説明する。
「ツールを使う本人に直接効果があるものと、ツールを使う本人以外に効果が出るものの大きく2つに分かれます。後者については分かりにくいかもしれませんが、例えば、成績を集計してメールで発信するというような業務を考えると分かりやすいです。
RPAで削減できる時間が少なかったとしても、そのメールを送る相手は何十人、何百人といる場合があります。結果として、その人たちはより早く情報を受け取れる。今まで能動的に情報を見に行く必要があったものが、プッシュ通知で来るようになるといったメリットが生まれるケースもありました」(近田さん)
PoCライセンスで作ったロボットソフトウェアは全部で6体。11月からは、効果の高いロボットから本稼働させ、さらに新しいロボットの開発にも着手している。Excel VBAで作る1クリックツールもやめるわけではない。2つのツールを共存させ、使い分けていきたいという。
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