三井住友海上のRPA導入、そのキーマンは知る人ぞ知るExcel VBAマスターだった:【特集】Transborder 〜デジタル変革の旗手たち〜(2/4 ページ)
わずか1年足らずでRPAの導入に成功した三井住友海上。導入を主導した近田さんは、ビジネスとIT、両者の知見を持つ特異なキャリアと「Excel VBAマスター」という、これまた保険営業らしからぬ、特異なスキルを持った人物だった。
例えば、社内イントラネットの検索システムとして、Google検索アプライアンスを導入し、社内文書検索システムの整備を行った。保険業務というのは「約款」や規定集が重要。当然、社内には膨大な書類が保存されることになる。デジタルで作成されたファイルはもちろん、過去の紙ベースのものもデジタル化し、検索できるようにしておくことは必須だ。
しかし、イントラネットで共有する仕組みがうまくいっていなかったことから、Googleを使った新しい検索システムへの移行を行った。今では企業内サイト検索にGoogle検索が使われているのは珍しくないが、導入したのは2006年のこと。日本企業で最も早い導入だったそうだ(参照リンク)。
IT部門ではなく、ビジネス部門に置かれた「マクロ開発ユニット」
そうした業務の一環で生まれたのが、Excel VBAを使った業務自動化のためのソフトウェアロボット「1クリックツール」だった。その後、近田さんは1クリックツールの開発ユニットを立ち上げたが、その開発ユニットはIT部門ではなく、ビジネス部門に置かれた。
これは、2つの面で良い効果を生んだと近田さんは振り返る。まずは自動化する作業プロセスの理解がしやすかったことだ。ビジネス部門の経験がある開発メンバーなので、ロボット化する保険業務そのものの理解が早かった。
開発する人材集めの点でもメリットがあった。社内からの業務自動化依頼に対応するため、ユニットを作る必要性が出てきたが、開発部署がビジネス部門に設置されていたため、社内で広くプログラミングスキルのある人間を探すことができたという。近田さん自身も社内でVBA勉強会などを行い、積極的に人材育成を行った結果、ユニットは最終的に17人になった。
とはいえ、複数のシステムを連携させるという性格上、IT部門との連携も大切だ。物理的なロボットでも議論されているように、誰がロボットの動作責任を取るかという点にも関わってくる。三井住友海上では、こうした調整も1つ1つ進めていった。1クリックツールの制御対象となるシステムには、それぞれ動作の責任を持つ“オーナー”を置いているという。
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