流通を科学し、建設現場を見える化する――DXを支えるクラウドの力:Microsoft Focus(1/2 ページ)
小売業と建設業の現場で、デジタルトランスフォーメーション(DX)のプラットフォームとして「Microsoft Azure」が採用された。それぞれの特徴から、Azure活用の可能性を探ってみる。
日本マイクロソフトの「Microsoft Azure」を活用した2つのデジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みが公表された。
1つは、小売業において、商品を袋に入れたままで会計処理を完了させることができる「ウォークスルー型RFID会計ソリューション」。もう1つは、建設現場で利用されるIoT建機やドローンなどから発信されるデータを活用し、現場の効率化を目指す建設現場向けオープンIoTプラットフォーム「LANDLOG」である。
日本マイクロソフトは2018年度の事業方針で重点業種として、製造、金融、流通・小売、政府・自治体、先端研究、医療の6つのインダストリーを示している。今回の事例は、その中の「流通」「製造」の事例であり、いずれも重点業種の対象になるものだ。
RFIDで細やかな商品管理を
ウォークスルー型RFID会計ソリューションは、212店舗のスーパーを展開するトライアルカンパニーが、福岡市の本社内に設置した実験店舗「トライアルラボ」を活用して、社内を対象に実証実験を開始したもの。RFIDに貼付した商品をエコバッグなどに入れたまま会計レーンを通すだけで、自動で精算が行われ、プリペイドカードから買った分の金額が引かれる。実用化においてはパナソニックが協力している。
「これまで平均25秒かかっていたレジの決済を5秒で完了できる」(パナソニック執行役員 青田広幸氏)のがポイントだ。
米国では、レジなしで自動決済を行う「Amazon Go」が注目を集めており、中国でも無人化店舗の取り組みが始まっているが、これらの自動店舗は、カメラを活用した仕組みが中心になっている。トライアルカンパニーの取り組みは、RFIDを活用している点が大きく異なる。
トライアルカンパニーではRFIDの特徴を生かし、商品の個品管理を実現。例えば、弁当やおにぎり、サンドイッチなどの場合は、賞味期限の残り時間に合わせて自動値引きを行うダイナミックプライシングを実現できる。また、商品展示棚にセンサーを設置することで、商品残数を確認することも可能だ。さらに、製造段階からタグを貼付すれば、製造、物流段階での管理も可能になる。
「RFIDはコストが高いという課題があるが、小売だけではなく、製造や物流といったサプライチェーン全体にも効果をもたらことになる。日本発で世界の流通を変えていきたい」とパナソニックの青田氏は意気込む。
課題となるRFIDのコストについても、現在は1個あたり10数円だが、パナソニックが将来は単価10円のチョコレートでも運用できるよう、1円未満に引き下げる考えを示している。
既存小売市場はeコマースの広がりにより、30年後には約半分に縮小するともいわれている。また、高齢化と人口減少によって、小売店における働き手が減少するという指摘もある。
トライアルカンパニーでは、「流通を科学する」をキーワードに、AIやITを活用したウォークスルー型RFID会計ソリューションによって小売りの課題解決を目指す考えだ。
こうしてみると小売店舗でのRFIDの活用は、米国や中国で行われている無人化店舗とは異なる「日本版無人化店舗」への取り組みともいえるだろう。
実は経済産業省では、2017年に「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」を発表しており、2025年までにセブン-イレブン、ファミリーマート、ローソン、ミニストップ、ニューデイズが取り扱う全ての商品に、電子タグを採用することで合意している。
今回のMicrosoft Azureをプラットフォームに採用したウォークスルー型RFID会計ソリューションは、こうした政府主導の次世代店舗への動きを捉えた実験ともいえそうだ。
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