流通を科学し、建設現場を見える化する――DXを支えるクラウドの力:Microsoft Focus(2/2 ページ)
小売業と建設業の現場で、デジタルトランスフォーメーション(DX)のプラットフォームとして「Microsoft Azure」が採用された。それぞれの特徴から、Azure活用の可能性を探ってみる。
“スマートな未来の建築現場”を支える
一方で、ランドログの建設現場向けオープンIoTプラットフォームLANDLOGは、建設現場の課題を解決するDXソリューションとして注目を集めそうだ。
Microsoft Azureを活用した建設現場向けオープンIoTプラットフォーム「LANDLOG」では、建設生産プロセスに関するさまざまなデータを集積し、現場の効率化に活用できる形式でデータを一元管理する。
IoTに対応した建機から発信されるデータや、建設現場に設置された作業員向けの飲料自動販売機のデータまで、建設生産プロセス全体に関わる「コト」のデータを収集し、そのデータを基に最適な工事の作業量や作業員の人数、建機の台数などに反映。現場の業務効率化につなげるデータとして、アプリケーション開発企業へ提供する。
さらに、ドローンなどの活用で建設現場を撮影し、そのデータをAzure上で収集することで、建設現場のリアルタイムな作業進捗などを定量的に把握できるようにするシステムも提供する。
ドローンでは、毎日の土の変化を測量できる「日々ドローン」の提供を開始。現場で、30分間で3次元データを完成させることができるという。
これらのIoT対応建機やドローンなどから収集した形式が異なるデータは、Azure上の「Cosmos DB」に一元的に蓄積、管理され、蓄積されたデータは世界中のどこからでも利用できる。事業者は、オープンソースやLinuxなどの開発プラットフォームを気にすることなく、LANDLOG上に自社のサービスを構築し、提供することが可能になる。
「データを活用した建設現場における生産性向上、3次元化された図面データやIoT対応建機などから送信されたデータの可視化などによる定量的な把握を可能にすることで、建設業界全体のDXの推進を目指す」としている。
建設業界は、労働人口の減少とともに、働き手が減少。2025年には、技能労働者の4割が離職するとみられている。さらに、90%以上が年商6億円以下の中小事業者で構成されるといったように、1つひとつの企業体力にも課題がある。
今や建設業界全体として労働生産性を高めることが喫緊の課題となっており、LANDLOGはそうした課題の解決にもつながるとしている。
ランドログの親会社であるコマツは、現場に関わる全てのモノをICTで有機的に接続し、安全で生産性の高いスマートな未来の建設現場を創造する「スマートコントラクション」の提供を2012年から開始している。建設生産プロセスの全体を3次元データでつなぐ、“建設現場の見える化”に取り組み、これまでに4000現場に導入しているという。
具体的には、建設機械での施工をICTで自動制御するICT(情報化施工)建機を導入し、3次元の図面通りに土を盛るといったサービスを提供している。
しかし、「掘る」「運ぶ」といった前後工程にボトルネックが発生し、生産性が上がらず効果が限定的になってしまうという課題も発生していた。
そこでコマツは、工程全体を網羅するために、コマツの建設機械から発信されるデータだけではなく、コマツの建設機械以外から発信される各種データを活用することを目的にランドログを設立。プロセス横断のマルチデバイスの接続を可能とするオープンなプラットフォームとして、LANDLOGの提供を開始した。
ランドログと日本マイクロソフトは、LANDLOG上で提供される機能を、外部の企業が月額契約で利用できるクラウドサービスとして提供。企業は、規模や業種にかかわらず、同サービスを契約することで、特別なシステムを構築する必要なく、月額料金のみで、建設現場に関する各種データと、AIを活用したサービスを利用することが可能になる。
ランドログの井川甲作社長は、LANDLOGにMicrosoft Azureを採用した理由について、親会社であるコマツでMicrosoft Azureの利用実績があったことや、日本マイクロソフトの社員との連携によるサポートの手厚さ、グローバル展開する際のメリットを挙げている。また、「今後、Microsoftの『Cognitive Services』で提供されるAI機能を活用した、建設現場の画像解析機能の提供も予定しており、Microsoft Azureで提供されるSaaSの活用も検討したい」と話す。
2018年前半には、LANDLOGの海外展開を予定しており、ここでもMicrosoft Azureの効果が発揮されることになる。DXにおいて、Microsoft Azureを活用する例がこれからも増えていきそうだ。
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