AIの力を借りた新人タクシードライバー、売り上げはいくら増えた?:第2回 AI・人工知能 EXPO(2/2 ページ)
人口統計情報やタクシーの運行データなどの情報を解析し、タクシーの乗車需要を予測するNTTドコモの「AIタクシー」がAI・人工知能 EXPOで展示されていた。サービスリリース前の実証実験では、AIタクシーを使った新人ドライバーの売り上げが実際に上がったのだという。
ブースの説明員によれば、東京無線タクシーでの実証実験に参加した新人ドライバー16人は、他のドライバーと比べて、1人1日あたり3115円の売り上げが増えたという。東京都心における1日タクシーの平均売り上げ(1日)が約5万円弱といわれていることを考えると、大体6%ほど売り上げが増えたことになる。
ちなみに名古屋のつばめタクシーで行った実験については、売り上げの上がり幅が平均1200円程度だったとのこと。東京と比べて少ないが、タクシー需要が非常に高い東京と状況が異なることは留意しておきたい。
タクシードライバーの高齢化や人材不足が叫ばれる昨今、「新人でもすぐに結果が出しやすくなれば、新たなドライバーを確保しやすくなるのではないか」というのがNTTドコモの考え。その背景には、ほとんどのタクシー会社が歩合制を採用しており、売り上げが自らの収入に直結するという業界構造がある。
「売り上げ向上もそうですが、効率よくお客さまを拾えるようになったことで、ガソリン代が大きく減ったという効果もありました。これらの結果を踏まえて、導入を決めたそうです」(説明員)
AIを活用した「乗り合いバス」も実験中
NTTのブースでは、このほかにも、スマートフォンを使って乗車リクエストを行い、そのリクエストに応じてAIが配車やルート変更を行う「AI運行バス」のデモも展示していた。2018年3月下旬から、福島県会津若松市で実証実験を始めている。
市内に点在する観光地をバスが効率よく回るためのシステムで、ユーザーは鶴ヶ城、会津武家屋敷など25カ所の乗降ポイントから場所を選ぶ。リアルタイムで変わる走行ルートは、タブレットアプリを通じて逐次ドライバーに届けられる。
AIタクシーもAI運行バスも、ドライバーとタクシー(バス)の利用者をつなぐことで、より効率的な運用を行い、顧客満足度を高めるのが目的だ。データ解析やAIの技術が発展していくことで、公共交通機関はユーザーのニーズに寄り添うものになっていくだろう。
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