「Alexa居酒屋」はなぜ生まれた? オーダーシステム開発の苦労とその可能性:ただの客寄せか、省人化の救世主か(5/5 ページ)
スマートスピーカー「Amazon Echo Dot」に話し掛けて注文を行う“Alexa居酒屋”の実証実験が、東京・渋谷の居酒屋「天空の月」で始まった。居酒屋でスマートスピーカーは活躍できるのか。プロジェクトの裏側とボイスUIの可能性に迫った。
“スマートスピーカーを使う”ストーリーをどう作るか?
安価なスマートスピーカーは購入のハードルが高くないことから、システム開発にも手を出しやすい一方、どのように運用フローに乗せるかがキモになる。デバイスによってユーザーの行動をある程度限定できるタブレットとは違い、使われる場所やシーンによって、人が話す言葉は全く変わる。待ち構える側の準備、つまり想定するストーリーやシナリオが大事になるのだ。
「情報を伝えるときに、文字や画像を使うのと、声しか使えないのではシナリオは大きく変わります。今回は“どこまでAlexaにしゃべらせるか”という点に苦労しました。スマートスピーカーはロボットではないですし、同じようなせりふを何度も聞くので、お客さんは飽きてきます。説明的な情報はなるべく簡潔にするのが望ましい。
人は長い話を覚えられませんし、居酒屋という場所であればなおさらでしょう。『注文番号と個数を教えてください』くらいの長さが適切だと考えました。こうした説明的な要素を、利用シナリオに沿った形でどううまく実装するか。演劇の台本を作るのにも似ているかもしれませんね。これが、ボイスUIを使ったビジネス向けのアプリ製作で、とても重要なポイントだと思います」(椋代さん)
今回のシステムは今後もブラッシュアップを続け、聞き取り精度の向上やPOS連携、メニューの解説といった機能を追加していく予定だ。スマートスピーカーをどうビジネスに生かせばいいのか。ボイスUIの可能性を探るこの実証実験から、得られるヒントは多いはずだ。皆さんも一度、渋谷に出向いて試してみてはいかがだろうか。
関連記事
- 神田の居酒屋にロボットが来た日――“飲みニケーションロボット”の作り方
東京・神田の居酒屋「くろきん」に卓上型コミュニケーションロボット「Sota」が登場。飲み会を盛り上げる仕掛けとして、同店の来店者増に一役買っているという。居酒屋にロボット、このプロジェクトはどのようにして始まったのか。その裏側に迫った。 - ディープラーニングで急激に進化――意外と奥が深い「音声合成」の世界
自動音声案内をはじめとして、スマートスピーカーなどでも使われる人工的な「音声合成」。その研究は50年以上もの長い歴史があるが、最近は機械学習によって、急速な進化を遂げているのだという。 - 「iPhone X」と「スマートスピーカー」、買うのやめました
この秋、話題の2つのデバイス「iPhone X」と「スマートスピーカー」。飛びつきたくなる気持ちを抑えて購入を見送った理由とは。 - コレ1枚で分かる「“人に寄り添うIT”を目指す音声認識」
次世代のUI(ユーザーインタフェース)と期待される音声認識技術がいかにして登場したのでしょうか? PCを操作するために生まれたキーボードと人との関係から振り返ってみましょう。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.