最強のビジネスパーソンは「戦わずして勝つ」 そのたった1つの方法(2/2 ページ)
ゴリラはドラミングをして、互いの種を攻撃しあうことを避けるのと同様に、真に賢い人間は、無駄な敵は作らない――。そこに、多くの経営者が持つ魅力の証しがあるのではないか。
一定レベル以上の賢い人にとって、戦略は「模倣可能なゲーム」
厳密にいうと、戦略というのは極めて重要だが、一定レベル以上の賢い人にとって、それは「模倣可能なゲーム」なのである。後は「そのゲームに、何時間のめり込めるか」で結果に差がつく。そういう構造だ。
となると面白い。なぜなら「本当に賢い人間同士」がぶつかったときは、差別化する要因がなくなってしまうからだ。これはある種、ゲーム理論における「均衡状態」に似ている。戦略が模倣されるものであるならば、模倣する方がコストが少ないため、後追いの方が有利だ。そうなれば、お互いに「何もしない」のが、もっとも合理的な選択になってしまう。
これで、ようやく本質的な問いに答える準備ができた。つまり、問題はどうやって「戦わずに勝つ状態を、事前に作るか」である。
▼ここまでの要約
あるレベルの賢い人→戦略はパクれる。だから、実行で差がつく
真に賢い人→戦略をパクり、その上で実行もできる。だから差がつきにくい
もっともっと賢い人→戦わずにして勝つ状態を、事前に作る
覚悟が決まっている人間が、最もてごわい
どうやって戦わずにして勝つか?
結論を言うとそれは「圧倒的な覚悟を決め、それを見せつけること」だと思う。ビジネスパーソンとして、どんな敵が一番強いのか、といわれると、それは間違いなく不退転の覚悟を決めた人間である。
何度失敗しても、立ち上がり、何度でも、未来に向かう人間。「覚悟した人間」は、誰にも倒せない。成功するまで続けるため、失敗という概念がないからだ。最近の例で言えば、サイバーエージェントの社長を務める藤田晋氏が、AbemaTVに200億円をぶっこんだ話が分かりやすい。世間一般の常識から外れた大きさのリスクを負うことは、覚悟を見せつけるいい方法だ。
そして僕らは、圧倒的な覚悟を見せつけられたとき「こいつには絶対勝てない」と悟るだろう。なぜなら、多くの人にとって、覚悟というのは絶望の淵にたどり着いて初めて得られるものだからだ。僕らのように、挑戦する“前の人間”が絶望を味わうことはほぼ不可能だ。
- 圧倒的な覚悟を持つこと、これこそが、最強の一手なのである。
覚悟を持つことには、副次的なメリットもある。その1つは「人が寄ってくること」だ。最強の覚悟とは、当然、「死」であるが、面白いのは、人生のあるタイミングで死に直面し、覚悟した人間には「人が集まってくる」のだ。
逆説的では、ないだろうか?
死というと、暗いイメージが伴う。だが、むしろ結果は逆なのだ。覚悟を持った人間には過去は見えていない。未来しか見えない。そして、「過去」には他者が入るこむ余地はないが、「未来」には他者が入り込む余地がある。そして人間は、自分が入り込む余地がある場所に入る。
しかも、どうでもいい人ではない、「凄いやつ」ほど寄ってくるから面白い。
これには実体験がある。
「覚悟を持って挑む人間」に、周りは優しい
小さい頃から、僕は英語がコンプレックスであった。どれぐらい英語が話せなかったかというと、25歳ぐらいのとき、TOEICは多分300点ぐらいだった(鉛筆を転がしてマークシートを埋めた場合の点数に毛が生えた程度だ)。だが、それを半年で、ほぼ満点にまであげた。ついでに、同様の方法で、中国語も3カ月でHSK5級という、2級相当に当たる資格を取得した。
この話をすると、「なぜ、そんなに短い期間で語学を習得できたのか」と聞かれるが、覚悟せざるを得なかったからだ。お金もなく、保険もなく、英語もできない状態で、生きるのに必死だったからだ。
そして「覚悟を持って挑む人間」に周りは優しい。応援してくれるのだ。いろんな人が、「これもやってみたら?」「この人に会ってみたら?」と紹介してくれた。その応援があったからこそ、半年でそれなりには話せるようになった。これが「覚悟を持った人間に人は集まる」という実体験だ。
言いたいのはこういうことだ。
つまり、覚悟とは
- 強力なライバルを事前に避け、優秀な仲間を集める、最強の一手
なのである(しかも0円だ!)。
多くの経営者が魅力的な理由は、ここにある。
北野唯我氏プロフィール
北野唯我。兵庫県出身。日系大手、外資系戦略コンサルを経て、2016年にワンキャリアに参画、経営企画担当の執行役員。個人のブログ「週報」では「『天才を殺す凡人』から考える 大企業でイノベーションが起きないメカニズム」などが大ヒット。6月20日(水)に初の著書『転職の思考法』(ダイヤモンド社)を上梓する。
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