あっと驚く「建設×IoT」の取り組みを生んだコマツの経営理念 スマートコンストラクション誕生の裏側:Weekly Memo(2/2 ページ)
先進のIoT活用プロジェクト推進の背景には、なるほどと思わせる経営理念に基づく活動があった。それを実践したのはコマツ――。スマートコンストラクション誕生の裏側を取材する機会があったのでご紹介したい。
コマツがブランドマネジメントで目指すものとは
さて、本題に入ると、コマツのスマートコンストラクションとLANDLOGが生まれてきた背景として、その起点となったのがブランドマネジメントである。
コマツがいうブランドマネジメントとは何か。大橋氏のスピーチを基に、図3〜図5の3つの図を使って説明しよう。まず前提として、コマツのビジネスモデルが基本的にB2B(企業間取引)であることと、商品である建機の特性上、顧客とは長期間にわたる建機のライフサイクルで信頼関係を構築する必要があることを踏まえておいていただきたい。
図3に示したのが、コマツのブランドマネジメントにおける考え方である。左上に記されたマーケティングパラダイムの変化では、できたものを売る「Selling」からニーズに合ったものを売る「Marketing」へと時代が移り変わってきたが、同社ではさらに売れ続けるための戦略である「Branding」を重視し、強調点を“取引”から“関係性”に移行すべきだとしている。
その上で、コマツにおけるブランドマネジメントとは図3の右上にあるように、「お客さまにとって、コマツグループでなくてはならない度合いを高め、パートナーとして選ばれ続ける存在となる」ための活動と定義付けている。
さらに、図3の下方に記されているのは、顧客関係性相関チャートだ。ここでポイントになるのは、顧客の「理想」に向けた「目標」を把握し、それに対応すべく、コマツとして持てる「経営資源」と「能力」によって明確に「決意」を示すことである。
その核心部分を表現しているのが、図4である。左側の一般的な問題解決は“われわれの目標”が活動の起点になるのに対し、右側のブランドマネジメント活動は“お客さまの目標”が活動の起点となることを表している。
この図4の観点を建設産業の現状に照らし合わせて示したのが、図5である。そこで浮き彫りになってきたのは、「高齢化、若年層からの入職者不足、技術伝承が困難、生産性向上、安全性向上」といった問題である。こうした問題を解決するために、コマツが考案したのが、先述したIoT活用プロジェクトの発端となった世界初のICTブルドーザである。
コマツはブランドマネジメントによって目指すものとして、「顧客視点への意識改革」と「人材育成・組織能力の向上」の2つを掲げ、それを遂行する重要なポイントとして、「徹底的な見える化」「顧客目標の達成が活動の基点」「トップのリーダーシップと組織横断的な活動」「総合力=経営資源の総合化」の4つを挙げている。
結局は「顧客視点」という言葉に集約されるかもしれないが、筆者は図3の考え方が印象深かった。とくにブランドマネジメントの定義には、これまで積み重ねられてきたコマツの歴史と実績を感じさせられた。
今回のコマツの話は、技術革新の背景には確固たる企業理念に基づく活動があるという格好の事例である。こうした背景にある考え方や動きもしっかりと取材してお伝えしていきたいものである。
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