大量の書類仕事で疲弊した現場は、RPAを見て泣いた――双日で“ボランティア”が始めたプロジェクトが全社に広がるまで:【特集】Transborder 〜デジタル変革の旗手たち〜(2/2 ページ)
総合商社として知られる双日で、ITとは無縁の仕事をしていた社員が始めたRPAプロジェクトが脚光を浴びている。開始から1年足らずで全社規模に成長したプロジェクトを後押ししたものとは、一体何だったのか。
全社で進む双日のRPA その中身は?
数人のボランティアから始まったRPAは、やがて社内のあちこちで話題に上るようになる。スタートから数カ月で、全社を対象に開いたRPAの説明会には250人もの社員が参加。その熱気に押されたのか、2017年の終わりには、とうとう全社を挙げたRPAの導入が決まった。石井さんは、同社でITを使ったイノベーションを担当する「ビジネスイノベーション推進室」に異動し、RPAチームのリーダーとして、本格的に社内のRPAを進める立場になった。
全社へのRPA展開を決めたことで、双日は2018年1月にBlue Prismのサーバ型のRPAツール「Blue Prism」を導入。現在では財務部などの14業務を自動化し、年間1500時間程度を削減している。
「いずれは国外のグループ会社にも展開したいので、安定感のあるベンダーが提供していて、かつ全世界で使えるツールを探していました。運用も大規模になるため、サーバ上で管理できるタイプが向いていましたね。何種類か候補を検討しましたが、Blue Prismの場合、ロボットを作る際に、WebでもWindowsのソフトウェアでも、UIに統一感がある点がポイントでした」(石井さん)
ビジネスイノベーション推進室の八田吉蔵室長は、「2020年までには、全社で数百業務、年間で5万7000時間分の業務を自動化することが目標」と話す。多くの貿易書類を扱う同社のニーズに合わせ、今後はOCR(光学文字認識)とRPAを組み合わせ、書類の内容を自動的にテキスト化するといった取り組みも検討しているという。
2018年4月の時点で6人だったRPAチームは、グループ会社である日商エレクトロニクスからエンジニアたちが加わることで、10月には12人に増え、2019年にはさらに増員を図る見込みだ。
RPAで「天職」に出会った
チームの規模が大きくなり始めたことで、石井さん自身は、ボランティア時代から続ける、現場で業務のヒアリングを行う役割を、現場の業務を理解しつつプログラミングの経験もあるメンバーに「コンサルタント業務」として任せようとしている。また、以前と違ってロボットの運用や管理の規模も大きくなり始めたことから、いずれはそうした業務をIT部門に引き渡し、全社規模の計画として継続するための体制を徐々に作っていく計画だ。
「今まで、弊社では効率化というと、各本部や部署に分かれた取り組みが中心でした。今は、効率化が目に見えて分かるRPAというツールが見つかったことで、社内全体が盛り上がっているように感じます。これから国外に展開する際は、今まで作ったロボットを応用できるように、できるだけフォーマットを統一し、現地でもロボット開発ができる環境を作っていきたいですね」(石井さん)
IT部門の外で小さく始まった“異色”のRPAは、1年足らずで双日全社を巻き込んだプロジェクトへと成長した。「今の仕事が本当に楽しいし、周りのメンバーもそう言ってくれているのがありがたい」と語る石井さん。RPAは「スモールスタート」が成功のカギともいわれるが、石井さんの取り組みはそのお手本として参考になる部分は多いだろう。
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