三越伊勢丹、ユニ・チャームが年頭所感で示した「2019年のデジタル変革」:Weekly Memo(1/2 ページ)
2019年は、企業にとって、デジタル変革への取り組みがますます重要になる。そこで、ITベンダーではなく、ユーザー企業あるいは団体の年頭所感から、その意思を探ってみたい。
経団連と全銀協がデジタル変革に向けた新年メッセージ
本連載「Weekly Memo」も今回で536回目となり、11度目の新年を迎えた。あらためて読者諸氏に感謝申し上げたい。
これまで、新年の頭にはIT業界の大きなトレンドについて書くことが多かったが、今回は「デジタル変革」をキーワードに、ITベンダーではなく、ユーザー企業あるいは団体の年頭所感から、その取り組みへの意思を探ってみたい。
まずは、日本経済団体連合会(経団連)の中西宏明会長(日立製作所会長)の新年メッセージから。経団連では「デジタル技術は経済のみならず社会の基盤を大きく変える」という認識のもと、政府とともに「Society 5.0」を前面に打ち出している。中西氏のメッセージはそれを踏まえたものだ。
「Society 5.0とは、人類社会において、狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会に続く第5段階の“創造社会”であり、デジタル革新と多様な人々の想像・創造力の融合によって社会の課題を解決し、価値を創造する社会だ。雇用の喪失やデータの囲い込みによる格差の拡大、プライバシーのない監視社会の到来など、デジタル化による暗い未来を予想し、これを懸念する声もある。しかし、IoTやAIの活用により、人が単純作業から解放される時代だからこそ、人が人ならではの創造性を発揮し、最先端技術を使って新しい未来社会を創造していくことが可能になると信じる」
政府は、「Society 5.0」を、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会と定義している(出典:内閣府「Society 5.0」サイト)
その上で、経団連の意思としてこう語っている。
「経団連では、デジタル化を悲観的に捉えるのではなく、デジタル化を通じた明るい社会の創造という、未来に向けた前向きなコンセプトを日本から世界に発信していくことを意図して、Society 5.0を推進している。Society 5.0はデジタル変革を通じて、経済成長だけでなく、社会課題の解決や自然との共生を目指すものである」
経団連では、Society 5.0への変化により、Society 4.0までで克服できなかった制約から解放され、多様な生活や価値を追求できるようになるとする(出典:日本経済団体連合会「Society 5.0」サイト)
次に、全国銀行協会(全銀協)の藤原弘治会長(みずほ銀行頭取)の年頭所感から。藤原氏は「2019年は銀行界にとってデジタル変革を本格化する年になる」と明言。「この波は、銀行経営者にビジネスモデルの変革を問うだけでなく、メンタルモデルの改革、すなわち意識改革を求めるものだ。未来の金融はこれまでの延長線上にはない。機能、戦略、人材といった3つの側面から、非連続的な発想で、世の中がどう変わり、お客さまのニーズがどう変わるかを、あるべき姿からバックキャスティングで考える必要がある」と説く。
3つの側面については、機能面では「情報仲介機能」、戦略面では「戦略的協働」、人材面では「多様な人材の活用と挑戦の風土作り」が重要なポイントになるとした上で、藤原氏は全銀協としての意思をこう示した。
「これら3つに共通するのは、銀行が今まで以上に世の中の“結節点”となる必要がある、ということだ。銀行は従来金融仲介機能を通して、資金余剰主体と資金不足主体をつなぐ結節点としての役割を担ってきた。新たな時代においては“デザイン思考”を持ち、より多様なプレイヤーをつなぐ結節点として役割を果たしていくことができる」
経団連と全銀協の年頭所感の大半がデジタル変革に向けたメッセージだったのは、これまでなかったことだ。
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