三越伊勢丹、ユニ・チャームが年頭所感で示した「2019年のデジタル変革」:Weekly Memo(2/2 ページ)
2019年は、企業にとって、デジタル変革への取り組みがますます重要になる。そこで、ITベンダーではなく、ユーザー企業あるいは団体の年頭所感から、その意思を探ってみたい。
“第六感”を見いだすことがデジタル活用の本質
企業トップの年頭所感は次の2社を紹介しておきたい。まずは、三越伊勢丹ホールディングスの杉江俊彦社長のメッセージから。
「2019年は平成から新元号へ変わり、デジタルファーストの本格到来や、2020年を見据えたグローバル化の加速などにより、一層の“変化”が求められる新たな時代のスタートとなる。このような状況の中で、三越伊勢丹グループは、IT・店舗・人の力を活用した新時代の百貨店を目指し、グループの強みを生かし、デジタル技術を活用した世界中のモノ・コトとお客さまをマッチングするつなぎ手となることを目指していく」
杉江氏はそのための成長戦略として、(1)顧客に最高の顧客体験を提供するためのオンライン(EC)とオフライン(店舗)のシームレス化による「百貨店ビジネスモデルの革新」、(2)デジタルを活用した新しい購買体験を提供するための「オンラインの新たなビジネスモデルの構築」、(3)国内外の保有不動産の複合開発を通じた街づくりに貢献する「不動産事業の拡大」の3つを掲げ、「これらをスピーディーに進めるとともに、成長戦略の実現に向けた収益基盤を確立すべく、抜本的なコスト構造の改革に引き続き取り組んでいく」としている。
小売業界のデジタル変革というと、コンビニが話題になることが多い中で、百貨店を代表する三越伊勢丹の杉江氏のメッセージには確固たる決意を感じた。もう1つは、ユニ・チャームの高原豪久社長のメッセージだ。
「デジタル技術の活用の目的は、生活者の求める“夢”の領域を満たせる商品を開発することにある。人のゲノムが解析できたように、デジタル技術の進化によって、いずれ人間の五感はすべて正確に計測できるようになるだろう。しかし、それは当社のデジタル化の真の目的ではない。われわれはデジタルデータベースを活用して、五感を超える“第六感”を見いだすことがデジタル技術活用の本質だと考えている。
第六感とはインスピレーションだ。感と勘と観、勘が鋭い人というのは、自分の経験や記憶のデータベースから答えを導き出している。よって、人の勘というのは、実はその人のバックグラウンドから推定できるが、難しいのは感と観、これが第六感の中核になる。雰囲気とか居心地の良さ、風合い、テイスト、熱気、磁力、気持ち良さ、相性、好みやセンスといった、人の第六感といわれるものが生活者の描いている夢の領域と関わる感覚だ」
その上で、同社としての意思をこう語る。
「われわれが第六感を探りたいのは、それが顧客の価値観が変化する方向を見極めることにつながるからだ。顧客が思い描く夢の方向をデジタル技術で測りたい。同時に、すぐにはそれができないのであれば、まずは能動的にこちらから顧客に仕掛けて、価値の進化の風向きを変える試みを続けていきたい」
同社は衛生用品をはじめとした一般消費財の大手メーカーだが、この考え方は全てに共通するデジタル変革の本質だろう。
三越伊勢丹ホールディングスとユニ・チャームのメッセージは、あらゆる産業がデジタル化していくことを物語っている。2019年はその現象が如実に見られる年になりそうだ。
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