販路開拓に最大50万円支給、創業間もないベンチャーもOK 「小規模事業者持続化補助金」の使い方:目からうろこの行政サポート活用術(4/4 ページ)
既存の商品やサービス、新規に開発する商品やサービスで、新規顧客の獲得や販路拡大を図りたい中小企業や個人事業主に、その事業資金を補助してくれるのが「小規模事業者持続化補助金」だ。補助対象の事業が幅広く、使い勝手のいい補助金の詳細や、申請のポイントなどを紹介する。
経営計画を明確に――「東京都よろず支援拠点」との相談もお勧め
申請内容にもよるが、募集締め切りまで約2カ月弱といった短い期間で必要な書類を用意するのは、けっこう大変だろう。
はじめの申請で、労務に関する基本知識が薄い場合などは、「従業員5人以下」に「ほぼ毎日来るアルバイト従業員も数えるのか?」など、申請基準の判断に難しいケースもあるはず。公募要領には、各様式の書類の記載例も掲載されており(平成29年度補正予算 小規模事業者持続化補助金の公募要領では、p27〜47)、参考になるとはいえ、戸惑う部分も多いはず。
特に、経営計画書(様式2)では、末尾に「1.企業概要」「2.顧客ニーズと市場の動向」「3.自社が提供する商品・サービスの強み」「4.経営方針・目標と今後のプラン」の自由記述欄があるが、補助金の申請に対して、自社の計画をどうまとめるのが望ましいのかといった判断も含め、悩むところではないだろうか。
経営計画書などの作成については、もちろん最寄りの商工会議所または商工会に相談しながら進められるのだが、47都道府県に用意されている中小企業向けの無料の経営相談サービス「よろず支援拠点」も相談に乗ってくれる。
よろず支援拠点は、本連載で以前紹介したが、中小企業・小規模事業者のあらゆる経営相談の窓口になってくれる頼りになる公的機関だ。電話予約による対面相談で相談に乗ってくれるので、深く話し合うことも可能。対応スタッフは、中小企業診断士、税理士、弁護士など、経営の専門家がそろっている。
東京都よろず支援拠点のチーフコーディネーター金綱氏、コーディネーター金子氏から、小規模事業者持続化補助金の申請について助言をいただいたので、ここで紹介しよう。
「小規模事業者持続化補助金は、“地道な販路開拓”に利用できるもので、その範囲は意外に広く、使い勝手のよい補助金といえるでしょう。そもそも全事業者数の99.7%、従業員数の70.1%が中小企業(参考:中小企業庁 平成30年4月「最近の中小企業・小規模事業者政策について」/総務省「平成26年経済センサス-基礎調査」再編加工)に属する日本では、中小企業を安定して持続していくのは重要なこと。この補助金は、名称に「持続化」という語が入っていることから想像されるように、中小企業に長く存続してもらうためのものです。つまり、申請に当たり、継続して事業を行っていくために、どんな計画があるのか、販路開拓にどのようなアイデアを持っているのかが問われているのです」(金子氏)
「そのため、申請者には、今後の計画を、経営計画書(様式2)や補助事業計画書(様式3)に書いていただくようになっています。しかし、そういった経営計画については、うとい方が多いのも事実です。実際にモノやソフトウェアを作る『事業活動』には一生懸命でも、自社の経営をどの方向にどう進めていくかの指針となる『経営活動』は抜けているケースが多いようです。
事業を持続させるためには、手を動かすことに加え、どの方面に集中してやるか、どのように社会にアピールするかが重要です。よろず支援拠点は、これらの重要な計画を一緒に考えていくお手伝いをしますので、ぜひ活用していただきたいですね。
実際に補助金申請に成功された方を見ると、定期的によろず支援拠点をご利用いただいている方が多いようです。自社の強み、そのアピールの仕方を明確にするには、やはり、私たちのような第三者との話し合いの場を多く設けることが有益なのではないでしょうか」(金綱氏)
自社の強みと弱みをプロの視線で客観的に把握し、経営計画を明確にできるというのは、大きなメリットだ。補助金申請のポイントとなるだけでなく、今後の事業の継続・発展を支えるあらゆる活動のベースになる。仮に補助金の申請が通らなくても、自社経営の輪郭をはっきり見通せるスキルが得られるのは大きな進歩といえよう。
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