「令和」に改めて問う、あなたの会社が使っているクラウドはビジネスの競争力を高めているか?:Weekly Memo(2/2 ページ)
企業のITシステムはなぜクラウド化すべきなのか。そして、どう進めればよいか。これまで幾度となく論議されてきたこれらの問題を、ガートナーの名物アナリストである亦賀忠明氏の話を基に、あらためて考察したい。
図解で見る「ITシステムのクラウド化の進め方」
まず、図1は、キーとなるテクノロジーとユーザーニーズ、それに経営者視点を入れ込んで、それぞれの位置付けを描いたものである。日本企業の多くが現在ITシステムにおいて取り組んでいるのは、ユーザーの「早い、安い、より満足」、経営者の「ビジネスへ貢献せよ」というニーズに対して、テクノロジーとして「仮想化」から「クラウド」および「SDx(ソフトウェアデファインド)」へ移行しつつある段階だ。
ただ、亦賀氏は「日本企業の多くはこの段階で長らく足踏みしている。グローバル企業はすでに次の段階に進んでおり、日本企業も次への移行に注力すべきだ」と指摘。次の段階とは、ユーザーの「地球規模のスケールで、より早く、より安く、より満足」、経営者の「生き残れるようにもっと貢献せよ」というニーズに対して、図に記されているような最新テクノロジーを活用することである。ここでポイントになるのが、「クラウドは必須」になっている点だ。
図2は、これまでとこれからのコンピューティングスタイルの変化を示したものである。ガートナーでは、従来の業務システムを「M1」(モード1)、デジタル変革に向けた取り組みを「M2」(モード2)と呼んでいる。その違いは図の内容をご覧いただいた通りである。
では、具体的にクラウド化する際にどのような選択肢があるのか。それを示したのが、図3である。下段に既存システムを「現状維持」する場合、中段に「引っ越し」する場合、上段に「新築」する場合の対処法と、推奨度合いを示している。ちなみに、段階に応じて「松」「竹」「梅」とあるのは、松が99.999%、竹が99.99%、梅が99.9%を表すサービスレベル契約(SLA)の水準である。
同氏はこの図を示しながら、「引っ越しにコンテナやマイクロサービスを適用するのは推奨できない。それとともに、M2に向けて新築の準備を始めるべきだ」と強調した。
そして、図4が、図3で示した引っ越しや新築におけるクラウド戦略立案の段取りの例である。この図でのポイントは、引っ越しは「梅」中心であることと、「自分で運転」することだ。自分で運転とは、すなわちシステムインテグレーターに「丸投げ」しないことである。
これら4枚の図によって亦賀氏のメッセージをお伝えしたが、最後に筆者も一言、クラウドを利用する企業に申し上げておきたい。
それは、同氏の冒頭の発言にもあるように「クラウドを使う目的は、ビジネスの競争力を高めることにある」ということだ。最近のクラウド利用形態の論議を聞いていると、クラウドを使うこと自体が目的になってしまっているケースが少なからず見受けられる。
そこで今回は、「令和」の新時代が始まったのを機に、あらためてこう問いかけておきたい。――「あなたの会社が使っているクラウドは、本当にビジネスの競争力を高めていますか?」
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