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コレ1枚で分かる「第3次AIブームとデータ流通量 2019年版」即席!3分で分かるITトレンド

「人工知能(AI)」という言葉が初めて登場したとされる1956年からおよそ60年、いまや実用面での応用が拡大し、「第3次AIブーム」に突入したAI。新たな発展の可能性を模索するためにも、その進化の歴史をおさらいしておきましょう。

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この連載は

 カップめんを待つ間に、電車の待ち時間に、歯磨きしている間に“いまさら聞けない”ITトレンドが分かっちゃう! いまさら聞けないITの最新トレンドやビジネス戦略を、体系的に整理して分かりやすく解説する連載です。「この用語、案外、分かっているようで分かっていないかも」「IT用語を現場の従業員にもっと分かりやすく説明できるようになりたい」――。情シスの皆さんのこんな課題を解決します。

※この記事は斎藤昌義氏のブログ「ITソリューション塾」より転載、編集しています。


1956年の夏の2カ月間、ニューハンプシャー州ハノーバーのダートマス大学で10人の研究者が集まり、人工知能研究を行うことを提案する。この研究は、学習のあらゆる側面や知能の他の機能を正確に記述することで、それをシミュレートする機械を作るための基礎研究を進める。機械に言語を使用させる方法、抽象化および概念を形成する方法、現在は人間にしか解けない問題を解決する方法、機械が自身を改善する方法の探索などの試みがなされるだろう。慎重に選ばれた科学者のグループがひと夏ともに取り組むことで、これらの問題のいくつかで大きな進歩が得られると考えている。

McCarthy et al 1955の冒頭を翻訳)

 上記の文章は、1956年7月から8月にかけて、「人工知能(AI)」という学術研究分野を確立したダートマス会議が開催され、その開催提案書の序文に書かれていたものです。この提案書で、人類史上初めて「Artificial Intelligence(人工知能)」という用語が使われたとされています。

 それからおよそ60年の歳月を経て、「機械学習」の進展や「ディープラーニング」の登場とともに、AIの実用化が急速に進み、今「第3次AIブーム」が到来しています。

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【図解】コレ1枚で分かる「第3次AIブームとデータ流通量」

 歴史を振り返ると、1956年のダートマス会議をきっかけに、「第1次AIブーム」が到来し、「人間の知能を機械でシミュレーションする」ためのさまざまな研究が行われました。

 1957年には、いま話題の「ディープラーニング」の原型ともいわれる「ニューラルネットワーク」が考案され、1958年にはそれを機械に実装した「パーセプトロン」が登場しました。

 しかし、この時代のAIは単純なゲームや迷路の探索といった程度の成果しか上げられず、このブームは終焉(しゅうえん)を迎えました。

 その後、コンピュータは急速な発展を遂げます。ビジネス分野では、1951年にRemington Randがビジネスコンピュータの先駆けとなる「UNIVAC-I」を販売しました。1964年には、IBMがビジネスコンピュータの普及の原動力となったといわれる「System/360」を発表。同年、Digital Equipment Corporationが商業的にはじめて成功したといわれるミニコンピュータ「PDP-8」を発売しました。

 1981年にIBMは、当時需要を拡大していたパーソナルコンピュータ分野に「IBM Personal Computer 5150」を投入し、ビジネス分野での大きな地位を確立することになります。

 コンピュータ性能の向上とその普及を背景に、AI研究に新たなブームが登場します。「第2次AIブーム」と呼ばれるこの時代に行われたのは、知識をルールや辞書として人間が記述し、それに基づいて知的処理と同等の結果を得ようという取り組みです。「ルールベース」といわれるこのやり方は、やがて特定分野の専門家の知識を記述する「エキスパートシステム」として成果を上げることになります。

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 しかし、ルールを記述するのは人間であり、世の中のあらゆる事象を記述することは難しく、汎用(はんよう)性を持たせることができないままブームの終焉を迎えます。

 その後、コンピュータ性能は「ムーアの法則」に従って急激な向上を果たします。また、1990年代に始まる「インターネット」や、2007年の「iPhone」の登場をきっかけとしたスマートフォンの普及により、データの流通量が爆発的に増大。これらを背景に機械学習の時代を迎えました。

 2011年には、米国の人気クイズ番組「Jeopardy!(ジョパディ!)」でIBMの「Watson」がクイズチャンピオンに勝利しました。2012年にはカナダのトロント大学のチームが、世界的な画像認識のコンテスト「ILSVRC(ImageNet Large Scale Visual Recognition Competition)」で、ディープランニングを使って勝利を収めました。その後、実用面での応用が急速に拡大し、今の「第3次AIブーム」に至っています。

 今後、IoT(Internet of Things)の普及によるデータ流通量のさらなる増大や、「ムーアの法則」に支えられたコンピュータに変わる新たなテクノロジーの登場により、AIの新たな発展の可能性が模索されています。

著者プロフィール:斎藤昌義

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【図解】コレ1枚でわかる最新ITトレンド [増強改訂版]

 日本IBMで営業として大手電気・電子製造業の顧客を担当。1995年に日本IBMを退職し、次代のITビジネス開発と人材育成を支援するネットコマースを設立。代表取締役に就任し、現在に至る。詳しいプロフィールはこちら。最新テクノロジーやビジネスの動向をまとめたプレゼンテーションデータをロイヤルティーフリーで提供する「ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA」はこちら


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