「デジタル革新がビジネスの“信頼”のハードルを上げる」――富士通次期社長が提起する新たな問題とは:Weekly Memo(2/2 ページ)
「デジタル革新がビジネスにおける“信頼”のハードルを上げる」――富士通の次期社長が自社の年次フォーラムの基調講演でこんな問題を提起した。果たして、どういうことか。
技術に対する信頼を再構築する3つの取り組み
1つ目は「信頼を支える技術」。時田氏によれば、「複雑化するトランザクションの信頼性確保」「サイバー攻撃への対応」「AIの思考過程における透明性確保」など、信頼を支える技術へのニーズは尽きないという。富士通では、世界中の研究機関とさらなる連携を強化し、こうした技術の高度化に努めていく構えだ。
2つ目は「Human Centricの追求」。同氏は「技術の活用において“人のために”という目的を再確認し、自らの行動に反映させること」だと語る。その一環として、同社は先頃、図2に示すようなAIに関する倫理規定「AIコミットメント」を発表した。内容については、今後も必要に応じて進化させていくとしている。
3つ目は「富士通の改革」。「お客さまにもっと価値を提供できる富士通になるということだ」と話す同氏は、そのキーワードとして「提案力」「デジタル」「グローバル」の3つを挙げ、それぞれ次のように説明した。
「提案力」については、「受け身ではなく市場の先を読んで提案してほしい」という顧客の声を受け、「現在、コンサルティング力の強化や営業体制の見直しを進めている」(時田氏)という。
「デジタル」については、顧客から見てもっと頼れる存在になることを目指し、「必要なのは、その技術力とそれをサービスとして提供する力。当社には画期的な技術を生み出す力を持つ富士通研究所がある。その力をベースに富士通が長年培ってきた業務・業種ノウハウをより一層生かせるフォーメーションに変えていく」(同氏)と述べた。
「グローバル」については、「世界に通用する価値を提供していくことができるように、自らのグローバル化をさらに徹底的に進めていく」(同氏)考えだ。
加えて、「これら全てを支えるのが人材」と語った時田氏は、「継続して社内の人材の専門性をより一層高めて、プロフェッショナル集団に変えていくとともに、外部からも優秀な人材が集まってくるようにしたい。そのためには、富士通自身が外部から見て、魅力のある存在にならなくてはいけない」と強調した。
以上が、技術に対する信頼を再構築するための富士通の取り組みだが、あらためて上記に示した「デジタル革新が進めば信頼のハードルが上がる」および「企業のITシステムにおける信頼の確保における難しさ」といった2つの問題は、ユーザー企業も心得ておきたい内容である。
加えて、「ICTはビジネスを支える信頼」との時田氏の言葉も、ICTに携わる人間は立場に関係なく心得ておきたいところである。筆者もこの視点を今後の取材に反映させていきたい。
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