「研究者がまず客先へ」――富士通が研究開発方針を“再定義”した理由:Weekly Memo(1/2 ページ)
富士通が研究開発方針を“再定義”した。デジタルトランスフォーメーションの時代へと移り変わりつつある中でのITベンダーの研究開発のありようを示す動きといえそうだ。
「Reliability and Creativity」から「Trust and Co-creation」へ
「これまでの研究開発方針を再定義した」――。富士通の研究開発子会社である富士通研究所の佐々木繁社長は、同社が9月20日に開いた研究開発戦略説明会でこう切り出した。2018年で研究所創立50周年を迎えたのを機に、との思いもあるようだが、最大の要因は時代の変化だ。まずは佐々木氏の話をもとに「再定義」の内容を説明しよう。
「テクノロジーカンパニー」をうたう富士通は、1976年に「信頼と創造の富士通」という企業メッセージを発表して以来、「信頼と創造」は研究開発方針の礎としても掲げてきた。この言葉を旗印に、同社はその後、国内最大手のITベンダーとしてこれまで存在感を発揮してきた。
しかし、図1に示すようにICTはユーザーにとって、これまで「業務効率化」が中心だったが、ここにきて「イノベーション創出」や「社会課題の解決」へと役割が変化してきている。これがすなわち、デジタル時代への変化でもある。
では、その変化は何をもたらすのか。デジタルによって「つながる世界」では、企業、個人、ビジネスなどシステムの組み合わせの要素が多く、複雑かつ膨大になる。そうすると、物事の「質」の判断が難しくなり、「ノイズ」の混入も防げなくなる。
そうしたデジタル時代の変化に対応するためには、どうすればよいか。富士通は「“Trust”な世界を実現すれば、企業や個人、ビジネスなどがつながりやすくなり、“Co-creation”が加速して新たな展開が広がる」との見解に至った。ちなみにCo-creationとは、絶え間なくイノベーションを生み出す「共創」を意味する。
そこでこのたび、これまで研究開発方針の礎としてきた「信頼と創造」の英語表記である「Reliability and Creativity」を「Trust and Co-creation」と再定義し、研究開発方針を「デジタル時代のTrustとCo-creationによりイノベーションを創出し、社会・経済の発展に寄与する」とした。ここでのTrustは「お客さまのトラストなビジネス環境を提供するための先端テクノロジーを開発する」、またCo-creationは「先端テクノロジーでお客さまの本業を強化・拡大し、共に成長する」との富士通としての解釈を持たせている。
見た目は「信頼と創造」の日本語をそのままに英語だけ表記を変えただけだが、同社としてはそれにより、その意味を再定義した格好だ。
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