Workdayのファイナンスにクラウド版Informatica、壮絶な“初物導入の舞台裏”全部見せます:怒濤の5並列プロジェクトを振り返る(6/8 ページ)
あの、話題のプロジェクトの現場で、実際にどんなことが起こっていたのか――。初物ソリューション導入の「いいことも悪いことも全て」公開するというイベントが開催された。
プロジェクトメンバーが振り返る「反省すべき点」
良かった点ばかりでなく、「ここは反省すべき点では?」「こうした方が良かったのでは?」といった反省点も、多くのプロジェクトメンバーから寄せられた。その中でも代表的なものを幾つか紹介しよう。
プロジェクト開始直前にスコープが拡大
反省すべき点の1つが、プロジェクト開始直前のスコープの拡大だ。あらかじめプロジェクトの開発スコープについて、プロジェクトマネジメント側とプロジェクト側とで綿密に話し合い、いったんは合意が取れていたにもかかわらず、クックパッドの経営陣とのすり合わせがうまくいかず、対象スコープが拡大してしまったという。
プロジェクトマネジメントを担当したコンサルタントは、「契約時に定めていたWorkdayの導入範囲をプロジェクト直前に変更することとなってしまったときは、正直なところどうしようかと思いました。体制的にも、そこまでの機能をカバーできるリソースはなかったのですが、何とか調整して乗り切りました。ただし、プロジェクト開始直後のこのつまずきで、一時的ではあれ、中野さんに対する信頼が揺らいだのも事実です」と当時の心境を振り返る。
中野氏もこの点について、「私の上層部に対する説明や説得が不足していたかもしれません。事前の握りの失敗ですね」と反省の弁を述べていた。
現場の体制変更が発生
業務システムの導入プロジェクトでは、業務内容を最も良く知る現場担当者の協力が不可欠だ。しかし、今回のWorkdayプロジェクトでは、人事と経理の現場担当者がプロジェクトの途中で抜けてしまうという異例の事態に見舞われ、それがプロジェクトの進捗に与えた影響は、極めて大きかったという。中野氏は、そのあたりの事情について次のように振り返る。
「もともと当社の財務部門や人事部門は、人がさほど多くない上に、本業をこなしながらシステム刷新のための要件定義もこなさなくてはなりませんでした。プロジェクト業務が通常業務の上に乗るわけですから業務負荷が高くなります。
そんな状況下で、さらにERP刷新という大きな負荷がかかり、プロジェクト期間中に2回ほど体制維持の危機がありました。正直なところ、私がこれまで経験したプロジェクトの中でも体制は不安定な方だったと思います。ギリギリで進めているので体制が一箇所でも崩れるとしんどいですね。社内外のどこも人手不足ですから補強も難しい」(中野氏)
Workday導入担当者は次のように述べる。
「担当者がいなくなってしまうと、その人に蓄積されていたプロジェクトのノウハウが一気に失われ、また一からやり直しになってしまいます。特に今回のような基幹システムは、『導入しておしまい』というわけにはいきません。導入後も長期間に渡ってご利用いただくシステムですから、運用に必要な製品のノウハウをプロジェクトの最中にお伝えします。
これをしっかりやっておかないと、システムがブラックボックス化してしまい、カットオーバー後の運用や改修、アップグレードなどに大きな支障を来しかねません。担当者がプロジェクトの最中にいなくなってしまうと、次に来た方にまた一からスキルトランスファーしなくてはならなくなります」(WorkdayのHR導入担当者)
よくない出来事が同じタイミングに集中してしまったという不幸はあったものの、やはり、この「離職リスクのマネジメント」が不十分であった点を本プロジェクトの反省点として挙げる参加者が多かった。
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