デジタルビジネスの“先行指標”――アクセンチュアにみる「コンサル×AI」の行方:Weekly Memo(2/2 ページ)
企業はこれからAIなどを活用したデジタルビジネスをどのように進めればよいのか。アクセンチュアが進めるデジタルビジネスを基に考察してみたい。
プラットフォームと業務適用型AIサービスを展開
江川氏に続いて説明に立ったアクセンチュアの保科学世デジタルコンサルティング本部アクセンチュア アプライド・インテリジェンス日本統括兼アクセンチュア・イノベーション・ハブ東京 共同統括マネジング・ディレクターは、まずAI導入を成功させる大前提として、「個別のAIエンジン導入がゴールではなく、ビジネスゴールに応じた業務の自動化や高度化を目指すべきだ」と強調した。
その上で、AI導入の成功に必要な要素として、「業務・システムの深い知見」「AI技術群の最適配置」「AIとヒトの協調」の3つを挙げた。それぞれの意味については、図3の通りである。
そうした考え方の下、同社が1年余り前に開発し、提供開始したのが「AI Hubプラットフォーム」だ。開発責任者の保科氏によると、これは「複数のAIエンジンから最適なエンジンを組み合わせ、人間のオペレーターとの協調も可能なプラットフォーム」である。さらに、同社ではこのプラットフォームに加え、AIサービスの開発・提供体制を2018年来、全国規模で整備してきたという。
そうした背景から、同社は今回、「AIパワード・サービス」と銘打ったAIサービス群を開発し、整備したことを明らかにした。これは「AI Hubプラットフォームの特長を生かした業務適用型AIサービス」である。現時点では図4のように4つのサービスを用意しており、今後、順次拡充していく計画だ。
4つのサービスをそれぞれ簡単に説明すると、「AIパワード・コンタクトセンター」はコールセンターを含むあらゆる顧客接点における問い合わせに対して、AIによる自動応答と、人による柔軟な対応を組み合わせることで、業務効率化と満足度の高いカスタマーエクスペリエンスを同時に実現するサービスである。
「AIパワード・バックオフィス」は“AI社員”とBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)専門部隊を組み合わせてバックオフィス業務の効率化を図るサービス。「AIパワード・コンシェルジュ」は対面接客の場で接客の音声を認識・理解し、会話内容に応じた適切な情報を随時提示することで、接客業務の効率化やカスタマーエクスペリエンスを向上させるサービス。「AIパワードSCM(サプライチェーンマネジメント)」はバリューチェーン全体を最適化・高速化し、無駄な在庫を最小化するサービスである。
この4つの内容からすると、従来コンサルティングの対象だった業務にAIを適用した「コンサル×AI」サービスとも見て取れる。そう捉えると、今後拡充されるAIパワード・サービスはユーザー企業から見れば、デジタルビジネスの“先行指標”になるかもしれない。というか、アクセンチュアにはぜひそういう役目を担ってほしいものである。
最後に、会見の質疑応答で「アクセンチュアの中でAI活用が進めば、社員数を大幅に減らせるのではないか」と聞いてみた。すると、江川氏は次のように答えた。
「例えば、現在の社員数48万人の半数以上を占めるBPOはAIによって相当効率化し、案件ごとに携わる人員を減らすとともに、そのコストダウンをお客さまに還元している。それが好循環となってBPOの受注が増え、人員をそちらに充てる状況が、今のところはまだ順調に続いている」
およそ25万人の社員が関係する話だけに、同社のダイナミックなビジネスぶりが推察できるが、「今のところはまだ」との言葉に江川氏の本音が透けて見える。やがては人員体制に影響を与える可能性もあるだろう。そんな動きもユーザー企業にとっては“先行指標”になるかもしれない。
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