SaaS専業ベンダーとしてSalesforceに次ぐ存在になれるか――ServiceNowの新たな戦略とは:Weekly Memo(2/2 ページ)
ITサービス管理を中心としたクラウドサービスを提供するServiceNowが、新たな戦略展開を図ろうとしている。SaaS専業ベンダーとしてSalesforce.comに次ぐ存在になれるか。同社の次なる一手とは。
金融と通信を皮切りに業種別ソリューション展開へ
ServiceNowのサービス群を示したのが、図2である。この図では、正式に「Now Platform」と呼ぶプラットフォーム(1個のPaaS)が上段にあり、それをベースに3種類の業務用クラウドアプリケーション(10個のSaaS)を提供していることを示している。最初に商品化されたSaaSのITサービス管理「ITSM」が好評を得て広く受け入れられたことで、ServiceNowの知名度はグッと上がった。
高山氏によると、ServiceNowが自社製SaaSをこれだけ増やせたのは、そのベースとなるPaaSを最初に開発し、顧客ニーズに応じてアプリケーションを生み出していったからだという。競合サービスは個別のSaaS領域で存在するものの、ラッピングシステムなので競合も含めて全てを包み込む存在となり得る。Platform of PlatformsであるServiceNowは、企業ITにおける無二の標準プラットフォームを目指している。
そんなServiceNowが、新たな戦略展開を図ろうとしている。米国本社CEOのビル・マクダーモット氏が2020年1月に発表した「業種別ソリューション展開」がそれだ。これまでのところ、金融と通信の2分野についてソリューションの内容を明らかにしており、業種別のパートナー展開と合わせて、間もなく本格的なビジネスを展開していく構えだ。
さらに、ServiceNow Japanの高橋卓也氏(マーケティング本部プロダクトマーケティング部長)は「米国本社は、他の業種についてもソリューションを開発し、順次提供していくことを明らかにしている」と話す。
マクダーモット氏が業種別ソリューション展開を打ち出した点は、興味深い。2019年10月にServiceNowのCEOに就任した同氏は、それまでおよそ10年間、SAPのCEOを務めた人物である。SAPで業種別ソリューション展開に注力してきた同氏が、ServiceNowでそのノウハウを生かすつもりならば、ServiceNowに相当のポテンシャルを感じていることの表れだろう。
実は今、有力なITベンダーがこぞって業種別ソリューション展開に注力している。SAP、Oracleといった大手エンタープライズソフトウェアベンダーをはじめ、Amazon Web Services(AWS)やMicrosoft、Salesforceといったクラウドサービスベンダーもパートナー展開と合わせて力を入れている。
その背景には、オンプレミスからクラウドへの移行とともに、DX(デジタルトランスフォーメーション)への対応に迫られる企業のニーズがある。特にDXについては業種別、さらには個々の企業のニーズにきめ細かく、スピーディーに対応することが求められている。
そうした背景を踏まえると、ServiceNowも上記のビッグベンダーたちと同様のビジネス展開を図るようなベンダーになってきたということだ。
ただ、肝心なのはこれからSaaS専業ベンダーとして一段と飛躍していくためにどうするか。成長速度が速いだけに、今後もサービスの維持や向上をしっかりと図っていけるか。また、ServiceNowを担ぐ人材をきちんと確保していけるか。引き続き、注目していきたい。
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