DellとHPEが挑む「ハードからソフトまでサブスク」戦略は奏功するか クラウドビジネスの視点から読み解く:Weekly Memo(2/2 ページ)
Dellが全ての製品をサブスクリプション型のサービスとして提供するビジネスモデルの転換に力を入れ始めた。同様の動きはHPEも既に進めている。サーバやPCなどのハードウェア市場の2大ベンダーともいえる両社の相次ぐこうした動きは何を意味しているのか。
DellとHPE、両社が新サービスで目指す「新たな形のユーザー支援」とは
一方、HPEは2019年6月に「2022年までに全てのポートフォリオを“as a Service”として提供可能にする」ことを掲げ、ビジネスモデルの転換を図っている。その新たなビジネスモデルとなる「企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援するためのプラットフォーム」を描いたのが図5だ。
図5には、HPEが訴求したい特徴が3つ記されている。
1つ目は、最下段の「エッジからクラウドまでの横断的な製品ポートフォリオ」だ。これは、図5に示された製品やサービスを提供できることを示す。
2つ目は、右側の縦軸に示された「あらゆる環境を“クラウド”に変革」だ。HPEの製品だけでなく、パートナー企業の製品もクラウドで提供できるように支援する。
そして、3つ目として上部に記された「HPE GreenLake」(以下、GreenLake)が、「全てをas a Serviceで提供する」ためのサブスクリプション型サービスで、先に述べたDellのAPEXと同様の目的を持つ施策である。
このGreenLakeについては、HPE日本法人の日本ヒューレット・パッカードがオンラインで記者会見を開いたのを受けて、本連載でも、2021年3月22日掲載の「クラウドサービスの中身をオンプレミスで提供 HPEの“大いなる狙い”とは?」、2020年12月21日掲載の「HPEの戦略にみる『新たなDXプラットフォーム競争』とは」で解説しているので参照していただきたい。
GreenLakeのユーザーメリットについては、3月22日掲載記事の中で、日本ヒューレット・パッカードの小川光由氏(取締役 常務執行役員)が明快に語っていたので改めて紹介しておこう。
「コストの最適化やスピード経営の観点からパブリッククラウドサービスが普及しつつあるが、一方で企業にとって貴重なデータの保護やセキュリティリスクからオンプレミスも利用され続けると当社では見ている。そのため、オンプレミスを従量課金で提供する方がパブリッククラウドよりも市場としての成長性が高いと予測している。しかもGreenLakeはパブリッククラウドも含めたハイブリッドクラウド環境にも柔軟に対応しており、全ての利用形態にクラウドエクスペリエンスを享受していただけると考えている」
この発言の内容は、先述したDellのAPEXにも当てはまる。HPEに続いてDellもサブスクリプション型サービスの展開に本腰を入れ始めた格好だ。この動きはすなわち、「フロービジネス」から「ストックビジネス」へのビジネスモデルの転換である。
両社はなぜ、ここにきてそうしたビジネスモデルの転換を図ろうとしているのか。両社日本法人の首脳は異口同音に、「クラウドサービスが着実に広がる中で、オンプレミスについてもサブスクリプション型を求める顧客ニーズが高まってきている」からだと言う。
こう聞くと、クラウドサービスの勢いに押し込まれている印象を受けるかもしれない。ただし、筆者自身は両社の思惑はもっとしたたかなように感じる。上記の小川氏の発言にもあるが、GreenLakeもAPEXも全てのクラウドサービス形態を包含した上で、ユーザー企業のDXを支援するファーストコンタクト先の「総合窓口」になろうとしているのではないか。
筆者の記憶では、HPEもDellもかつてはパブリッククラウドサービスに乗り出そうという姿勢を見せていた時期があったが、結局は自社の製品ポートフォリオの拡充に努めてきた。それが今、IT分野にとどまらない「サブスク」トレンドの中で、ユーザーから見て選択肢の幅広い、頼もしい存在に映る形になってきたのではないか。
ただ、APEXもGreenLakeも実際にどれほどのユーザー規模になるのか、本当に多くのユーザーが採用するムーブメントを起こすことができるのか、未知数なところがある。ビジネスモデルの転換がもたつけば、両社とも将来像を描けなくなる。それだけに、まさしく存亡をかけた挑戦が両社にとって始まったといえそうだ。
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