Web3ってDXに関係あるの? 「見るからに怪しい」と敬遠する前に体験してみよう:「不真面目」DXのすすめ
Web3をめぐる動きの中には投機的なものも多く、「あやしい」と敬遠する読者も多いでしょう。しかし、「それではもったいない」と筆者は考えます。次々に登場する新しいムーブメントやテクノロジーとの“付き合い方”を考えるときに、重視すべきこととは。
この連載について
この連載では、ITRの甲元宏明氏(プリンシパル・アナリスト)が企業経営者やITリーダー、IT部門の皆さんに向けて「不真面目」DXをお勧めします。
「不真面目なんてけしからん」と、「戻る」ボタンを押さないでください。
これまでの思考を疑い、必要であればひっくり返したり、これまでの実績や定説よりも時には直感を信じて新しいテクノロジーを導入したり――。独自性のある新しいサービスやイノベーションを生み出してきたのは、日本社会では推奨されてこなかったこうした「不真面目さ」ではないでしょうか。
変革(トランスフォーメーション)に日々真面目に取り組む皆さんも、このコラムを読む時間は「不真面目」にDXをとらえなおしてみませんか。今よりさらに柔軟な思考にトランスフォーメーションするための一つの助けになるかもしれません。
筆者紹介:甲元 宏明(アイ・ティ・アール プリンシパル・アナリスト)
三菱マテリアルでモデリング/アジャイル開発によるサプライチェーン改革やCRM・eコマースなどのシステム開発、ネットワーク再構築、グループ全体のIT戦略立案を主導。欧州企業との合弁事業ではグローバルIT責任者として欧州や北米、アジアのITを統括し、IT戦略立案・ERP展開を実施。2007年より現職。クラウド・コンピューティング、ネットワーク、ITアーキテクチャ、アジャイル開発/DevOps、開発言語/フレームワーク、OSSなどを担当し、ソリューション選定、再構築、導入などのプロジェクトを手がける。ユーザー企業のITアーキテクチャ設計や、ITベンダーの事業戦略などのコンサルティングの実績も豊富。
現在、本連載で前回取り上げた「ゼロトラスト」よりも盛り上がっているのが「Web3」です。IT系メディアはもちろんのこと、新聞やテレビなどでもよく取り上げられています。これは日本に限ったことではなく、欧米などでも同様のようです。Web3についての解説は数多くありますので、本稿では詳しい解説はいたしません。われらがITmediaエンタープライズにも解説(注)が掲載されていますので、ぜひお読みください。
世界中で盛り上がるWeb3
筆者を含め多くの人々がWeb3に注目するポイントは「分散型」ということに尽きます。それ以前のWeb、言い換えればインターネットの世界は「中央集権型」でした。これはアイロニカル(反語的)といえます。
誰もが通信環境さえあれば地球規模で等しく活動できるはずのインターネット上で、インターネット登場以前には考えられなかった巨大な力を持った少数の組織が生まれて覇権を獲得したのですから。
その意味でWeb3とは、インターネットの本来のポテンシャルを発揮するテクノロジーの集合体と捉えられるでしょう。Web3というテーマで紹介されることが多いテクノロジーはブロックチェーンやNFT(非代替性トークン)、 DAO(分散型自律組織)、スマートコントラクト、DeFi(分散型金融サービス)、DApps(分散型アプリケーション) などがあります。メタバース(ソーシャルメディア、AR、VR、MRなどの組み合わせで実現するデジタル仮想空間)もWeb3の文脈で語られることが多いです。
DAOとDXは相性が良い
先に紹介した多くのテクノロジーの中で、筆者はDAOに強く引かれます。中央集権は全て悪であるとは思いませんが、同じ目標を持って活動してきた人々の中からごく少数の人が強力な力と富を持つのは健全な姿とはいえず、それらを持たなかった人がモチベーションを失うことも少なくありません。それは組織にとっても損失です。
DAOの場合、組織内の参加者に階層はなく、組織内で発行されるトークン(仮想通貨)は貢献度に応じて分配され、特定の人が恣意(しい)的に操作することはできず、運営に透明性が確保されることになっています。
一つの企業に閉じたDX(デジタルトランスフォーメーション)は業務改革や改善にとどまるものが多く、本来のDXとはいえません。それに対し、複数の企業や組織のコラボレーションから生まれるイノベーティブなDXに取り組むためには、このDAOという仕組みは非常に効果的であると筆者は考えています。
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