金融機関の窓口業務はなぜゼロにならないのか? 「金融デジタルサービス利用実態調査」を読み解く:金融機関のDXはどう進む? ユーザーの期待と変革の現在地
窓口店舗縮小やオンライン化を進めているのに、金融機関が窓口業務をゼロにできないのはなぜか。アドビが実施した「金融デジタルサービス利用実態調査」によって金融機関のデジタルサービスに対する要望が世代や性別によって異なることが判明した。しかし、窓口業務をゼロにできない理由として見えてきたのは、世代間のデジタル格差とは別の要因だった。
さまざまな業界でDX(デジタルトランスフォーメーション)が進み、銀行や証券会社などの金融機関にもDXの波が来ています。本連載では金融機関のDXについて個人向けサービス、法人向けサービスの双方から考えたいと思います。第1回は、アドビが実施した「金融デジタルサービス利用実態調査」の結果を紹介しつつ、一般利用者の利用実態をみていきます。
コロナ禍でもオンライン化が進まない手続きは?
筆者は現在、アドビでPDFと電子サインソリューションを備える「Adobe Acrobat」製品の営業戦略部に所属しており、「Adobe Document Cloud」とAdobe Acrobat製品のビジネス拡大のために中長期的な視点で活動しています。以前はIT企業において金融機関向け営業としてメガバンクや地方銀行、証券会社、損害保険会社など幅広い金融機関を担当していました。
さて、コロナ禍をきっかけに一般企業にテレワークが急速に普及しました。ミーティングをはじめ、請求書手続きや経費精算手続きなどもオンライン化し、チャットやプロジェクト管理ツールなどを駆使することによって出社せずとも業務を継続できる体制を整えた会社も多いでしょう。
一方で、銀行をはじめとする金融機関のサービスは、コロナ禍であっても窓口に行かなければ手続きできない業務がまだまだあります。筆者もコロナ禍にもかかわらず「窓口以外では手続きできない」と言われて銀行に足を運んだことがあり、「リモート面談を取り入れるなど、もっとオンライ化できないものか」と感じています。
10年ほど前から銀行業務はオンライン化が進み、振り込みや残高照会はオンライン上で処理できるようになりましたが、オンラインでは処理できず、窓口に足を運ぶことを求められる手続きもまだ残っているのです。
具体的にはどのような手続きでしょうか。
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