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「ネットワークの分かるIT人材」をいかに育成するか――IIJの新施策から考えるWeekly Memo(1/2 ページ)

IT人材の不足はあらゆる分野で指摘されているが、中でも深刻なのが「ネットワークの分かる」IT人材の不足だ。IIJがこの課題の解消に向けて新たな取り組みを始めた。その内容からこの問題のポイントを探ってみたい。

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 「ネットワークは今や社会基盤となった。ひとたび障害が起きると、その影響は測りきれないほどになってきた。そうした中で、かねて懸念されてきたのが『ネットワークの分かる』IT人材が、とりわけ日本で数少ないことだ。インターネットイニシアティブ(以下、IIJ)としてこの育成に取り組み、社会貢献を果たしていきたい」

 IIJの鈴木幸一氏(会長 Co-CEO《共同最高経営責任者》)は、同社が2022年11月21日に開催した、新たなIT人材育成の施策に関する記者説明会でこう切り出した。


右から、IIJの鈴木幸一氏(会長 Co-CEO)と久島広幸氏(技術顧問)

「ネットワークの分かるIT人材」がなぜ不足しているのか

 IIJが同日発表した新たな施策とは、ネットワークの高度な技術を持つIT人材を増やす目的で、ネットワークとソフトウェア開発の両技術に精通したエンジニアを育成する「IIJアカデミー」を開設することだ。同アカデミーは2023年春に開講する予定となっている(図1)。


図1 IIJアカデミーのスキーム(出典:IIJの記者説明会資料)

 IIJは2022年12月3日に創業30周年を迎える。「当社には日本のインターネットをけん引してきた事業者として、ネットワーク技術とソフトウェア開発技術の知見がある。これらを最大限活用して、未来に向けてIT産業の根幹を支えるエンジニアを育成することで、デジタル社会のさらなる発展に貢献していきたい」と鈴木氏は力を込めて話した(図2)。


図2 IIJアカデミー開設の背景(出典:IIJの記者説明会資料)

 同氏とともに、今回の取り組みの責任者として会見に臨んだIIJの久島広幸氏(技術顧問)はIIJアカデミーについて「一言で表すと『実践演習を通じて技術を習得する教育の場』だ」と説明した。

 受講者は2023年1月から募集を開始する。IIJアカデミーは2023年1月から受講者を募集を開始する。18歳以上のスキルアップを望む若手ITエンジニアやITエンジニアを志望する学生などを対象に、12週間にわたり実習を中心とした実践的な教育プログラムを提供する。経験豊富なIIJの現役従業員が実用的な知見を基に指導するのに加え、インターネット事業者ならではのプログラムとしてIIJの設備に触れながら技術を習得できる。当面は定員を20〜30人として、マンツーマン方式で受講者個々のレベルに合わせて指導していく計画だ(図3)。


図3 IIJアカデミーの概要(出典:IIJの記者説明会資料)

 久島氏は、ネットワークの分かるIT人材が不足する要因について、「クラウドサービスやアプライアンス製品の普及に伴った各種ネットワーク機能のブラックボックス化が挙げられる。そのため、クラウドのユーザーインタフェースの操作には慣れているが、背後で動作するネットワークやソフトウェアの理解が乏しいといった問題が起きている」と指摘した。「こうした仕組みを理解して、高品質なソフトウェアを開発でき、『いざ』という時に対処できるエンジニアが、さまざまな企業で求められている。IIJアカデミーはその学びの場となる」と説明した。

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