NECが説く「デジタルツインで社会課題を解決するための4つの要件」とは:Weekly Memo(1/2 ページ)
さまざまな用途への適用が期待されている「デジタルツイン」について、NECのCTOが「社会課題を解決するための4つの要件」を明示した。メタバースを活用する上でも重要になるその内容とは。
「全ての産業はDX(デジタルトランスフォーメーション)とデジタルツインの連携でスマート化していく」
NECで最高技術責任者(CTO)を務める西原基夫氏(執行役員常務 兼 CTO)は、同社が2022年11月30日、研究開発の拠点である川崎市中原区の玉川事業場においてメディアとITアナリスト向けに開いた研究開発説明会でこう強調した。
研究開発部門が掲げた最新の技術ビジョンとは
同日は、NECの研究開発の最新状況について会見と展示、実演を交えて説明が行われた。本稿では冒頭で紹介した西原氏のデジタルツインを巡る話が興味深かったので、そこにフォーカスしたい。
西原氏の冒頭の発言は、NECの研究開発部門が2022年の技術ビジョンとして掲げたものだという。「あらゆる産業がデジタルツインを活用することで、DXがさらに進んでスマート化していく」(西原氏)ことを予見している。
デジタルツインは現実の世界と同様のデジタル空間を有効活用する技術として注目されている。NECによると、この技術を生かすためには「モデル化」「最適化」「対処・制御」「プラットフォーム」という4つの要件が求められるという(図1)。
この4つの要件について、西原氏は「実世界の情報をITによってデジタル空間へ持って行って『モデル化』する。モデル化してデジタル空間で『最適化』を行う。なぜ、そうするかというと、実世界ではできない実験もデジタル空間ならいろいろと試せるからだ。そうして最適化した手法を実世界に戻すために『対処・制御』する。こうしたデジタルツインの連携を支える『プラットフォーム』もしっかりしたものが必要になる」と説明した。
同氏によると、「NECはこの4つの要件において世界でもトップクラスの技術を保持している」とのことだ(図2)。
この4つの要件について、西原氏の説明を基にもう少し詳しく見ていこう。
モデル化とはすなわち「実世界の都市、産業、人のさまざまな変化を多様なセンサーでリアルタイムに捉え、精緻にモデル化する」ことだ。
例えば、先端センシングとAI(人工知能)によって「実世界の都市」モデル化した場合、施設や道路のデジタルツインによって、衛星SAR(合成開口レーダー)とAIによる橋梁の点検、管理の効率化を図ることができる。
「産業」では作業現場のデジタルツインによって、手指の動きをリアルタイムに把握して、複数人の多様な行動内容をデジタル化できる。
「人」は健康状態をデジタルツイン化することで、個人に合わせた身体のケアをいつでもどこでも体験できるようになる(図3)。
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