「データ分析チームが価値を提供できていない」割合は過半数に上る ガートナー調査で判明
ガートナーの調査によると、組織に効果的に価値を提供できているデータ、アナリティクス部門は世界企業の半数に満たないことが明らかになった。データ、アナリティクス部門で実績を上げているリーダーに共通する特徴とは。
ガートナージャパン(以下、ガートナー)は2023年3月28日、世界のデータ、アナリティクス(D&A)リーダーを対象した調査結果を発表した。
組織に効果的に価値を提供しているD&Aチームは半数未満
同調査は、2022年9〜11月に世界のD&Aリーダーを対象にオンラインで実施して566人から回答を得た。
同調査結果で、「自分のD&Aチームは組織に効果的に価値を提供している」と考えるD&Aリーダーの割合は半数に満たない(44%)ことが明らかになった。
D&Aは、ステークホルダーの利益を追求する役割を担う。D&Aチームを率いるデータ、アナリティクスの最高責任者(CDAO)は、その職務を成功させて測定可能なビジネス成果を提供するために、「存在感、実績、粘り強さに焦点を当てる必要がある」とガートナーは説明する。
ガートナーのドナ・メデイロス氏(アナリスト)によると、「最も成功しているCDAOは、経営幹部としての存在感を示し、データドリブンにビジネス実績を獲得する、俊敏性が高く戦略的なD&A組織を構築することで、同業他社を上回っている」という。
実績を出しているCDAOの特徴は?
同調査で、経営幹部としてのリーダーシップの特性として17項目について自分自身を「効果的」または「非常に効果的」と評価したD&Aリーダーの多くは「組織やチームの実績が高い」と回答し、リーダーシップの特性と実績には相関があることが分かった。
実績がトップクラスのD&Aリーダーの43%は「自身の専門的な能力開発に時間を割くことが有効である」と回答した。一方、実績が低いリーダーが同様の回答をした割合は19%だった。
ガートナーのアラン・ダンカン氏(アナリスト)は、「CDAOが成功するには、エリートリーダーになることが不可欠」と分析する。「トップクラスの実績を持つCDAOは、成功を実現するために、不透明な状況を乗り越えるスキルの向上に投資し、説得力のあるバリューストーリー(ビジネス価値のストーリー)を明示し、ビジネスにインパクトをもたらすD&Aプロダクト、サービスを見極めるスキルを開発している」と説明する。
CDAOは新たな要求に応える粘り強さが求められる
調査では、CDAOは多くの職責を担っていることも明らかになった。その範囲は「D&A戦略の定義と実施」(60%)、「D&A戦略の監督」(59%)、「D&Aガバナンスの構築と実施」(55%)、「データドリブンな組織文化変革の管理」(54%)など多岐にわたる。
さらに、多くのD&A部門では「データ管理」(65%)、「データガバナンス」(63%)、「高度なアナリティクス」(60%)などへの投資が拡大していることも明らかになった。D&A部門の平均的な予算は541万ドルで、過去1年間で規模が拡大したD&A部門は44%に上った。
D&Aに対する要求と投資の拡大は「CDAOの能力に対する信頼が高まり、D&A部門が企業に不可欠な存在として認知されるようになっている状況を反映している」とメデイロス氏は分析する。「D&Aはビジネスの具体的な成果を達成しなければならないというプレッシャーが高まるにつれて、D&Aが担う役割が増大する状況になっている」(メデイロス氏)
要求は広範で複雑な要求を課されつつあるD&A部門だが、その成功を妨げる最大の要因は、回答者の39%が挙げたように「スキルや人材の不足」だった。なお、今回の調査で上位6つの障壁として上がったのは、全て「人」に関連する課題だった。
効果的なD&Aチームを構築するためには「CDAOは、即戦力となる人材の採用に頼らない強固な人材管理戦略を策定する必要がある」とガートナーは分析する。中核となるD&A部門と広範なビジネス、テクノロジー部門の両方でデータドリブンな組織文化とデータリテラシーを促進するための教育、トレーニング、コーチングを行うことも重要になる。
D&Aを経営戦略に連携させる
同調査では、回答者の78%が「企業や組織の戦略やビジョン」をD&A戦略における上位3つのインプットの一つとして位置付けていることが分かった。さらに、68%は「戦略目標との整合性に基づいてD&Aイニシアチブを優先する」ことも分かった。
ダンカン氏は、「最も成功しているCDAOは、戦術よりも戦略を重視している」という。そのため、組織全体の多様なステークホルダーにサービスを提供するCDAOは「組織の戦略的優先課題と足並みをそろえ、重要な影響力を持つCEO、CIO、CFOにD&Aのビジョンが受け入れられるように注力することが重要」だと述べる。
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