ServiceNowが「Now Platform」の最新版「Utah」をリリース Now Platform活用のために日本企業がすべきこととは
ServiceNowが「Now Platform」の最新版「Utah」(ユタ)をリリースしたと発表した。ServiceNow Japanの原氏は、同日開催された記者説明会の中で、Now Platformをより活用するために日本企業が今後進めるべき取り組みに言及した。
ServiceNowは2023年4月11日、同社が提供する「Now Platform」の最新版「Utah」(ユタ)をリリースしたと発表した。同社日本法人のServiceNow Japanが米本社直轄の独立事業体に昇格してから初のアップデートとなる。
Utahの新機能とは?
Now Platformは企業が利用する業務アプリケーションのデータベースを統合するプラットフォームだ。業務や部門を横断して一元管理することで、ユーザーは可視化された業務プロセスを分析し、効率向上策を考えたり必要に応じて自動化を図ったりできる。
今回のUtahのリリースは、年に2回実施されているNow Platformのアップデートによるもので、2022年10月に実施された「Tokyo」に次ぐリリースとなる。
「激変する環境下で求められる、組織横断かつ迅速な変革をけん引するインテリジェント・プラットフォームへ」をうたうUtahのコンセプトは以下の3つだ。
- シンプルなエクスペリエンス
- 目的に応じた自動化
- 組織全体のアジリティ
Utahリリースに合わせて2023年4月11日に実施された記者説明会でServiceNow Japanの原 智宏氏(執行役員 ソリューションコンサルティング事業統括 事業統括本部長)は、上記のコンセプトを説明しつつ、「NowPlatformは、激変する現在の環境下で迅速、そして柔軟に変革を進める取り組みを、AIを活用した機能を搭載したプラットフォームとしてサポートする」と述べた。
Utahが搭載する主な新機能、拡張機能は次の7つだ。
- Process Optimization:遅延やボトルネックを可視化。プロセスの非効率性の原因を特定して是正措置を実施
- Workforce Optimization:ITSM(IT Service Management)やCSM(Customer Service Management)だけでなく、HR Service Deliveryなどの分野のワークフローをサポートするよう強化、拡張された。各チームメンバーのスキルを登録してワークロードバランスの改善したり、チーム全体における仕事の質の向上を図ったりする。個々のチームメンバーのスキルやスケジュールを登録してチームマネジメントを一元管理。人事業務の効率向上を図る
- Document Intelligence:AIを活用して文書からのテキスト抽出を自動化。人的ミスと作業時間の削減を図る
- ServiceNow Impact:支出額やプロジェクトが生み出した成果などを入力することで、IT投資の費用対効果やDXへの取り組み状況を可視化する
- Health and Safety Incident Management:従業員が「ヒヤリハット」を報告。従業員の健康と職場の安全をサポートする
- Security Incident Response Workspace:セキュリティインシデントを一元的なワークスペース内で検証
- AI Search:AI(人工知能)と自然言語処理によってユーザーがレコードにアクセスして問題解決に役立つ関連資料を特定するためのサポートを実施
中でもServiceNowが前面に打ち出すのが1のProcess Optimizationだ。
記者説明会ではデモが実施された。Process Optimizationは、プラットフォームに蓄積されたプロセスデータを利用して「業務過程のどこで時間がかかっているのか」「どの過程で手戻りが発生しているのか」を可視化する。これまで把握が難しかった、エンドユーザーがどのようにシステムを利用して業務を進めているかを可視化することで、改善すべきポイントが一目で把握できるとしている。
Utahに搭載された新機能のうち、5のHealth and Safetyも興味深い試みだ。
厚生労働省によると、ヒヤリハットとは「危ないことが起こったが、幸い(労働)災害には至らなかった事象」を指す。「ハインリッヒの法則」では1件の重大事故の裏には29件の軽傷事故、300件の無傷事故(ヒヤリハット)があるとされている。「ヒヤリ」とした経験を作業者全員が共有することで、リスクレベルの解析や作業の改善につなげて事故発生を防止する「ヒヤリハット活動」(「ヒヤリハット活動でリスクアセスメント」(厚生労働省))は製造業や建設業などの現場部門で広く実施されている。
原氏はHealth and Safety Incident Management機能について「重要なのは、全てのログが残っていること。そして、(何かが起こった際に)それらを分析することで原因を探り、レポートを作成できることだ」と強調する。
同機能は事故などの“非常時”だけでなく、従業員の健康といった“日常時”の管理も対象としている。「コロナ禍以降、従業員の健康を守ることへの意識が高まっている。従業員が安心して働けるようにするための安全な職場への投資をさらに進化させる。OSHA(米国労働安全衛生庁)が定めるインシデントログや年次サマリーのエクスポート機能などを提供することで、コンプライアンスへの準拠もサポートする」(原氏)
同社はこの機能がESG(環境や社会、企業統治を考慮した経営、事業活動)に資するものとして期待する。
より活用するために日本企業がすべきこと
今回は日本法人のServiceNow Japanが米本社直轄の独立事業体に昇格後、初のアップデートとなる。日本法人の位置付け変更を受けて、原氏は「(日本の顧客ニーズに合わせて)ローカライズする役割のメンバーを数多く配置した。今回のようなリリースの情報をよりローカライズしたかたちでタイムリーに届けることができるようになった」と述べた。
また、説明会で実施された質疑応答で、Now Platform活用における日本と米国の違いについて「米国よりも日本の方が、既存の(IT)投資を活用しながらトランスフォーメーションを進めていこうという考え方を持つCIOが少ない。これには日本企業が外部のパートナーにシステム作りを発注することが多いという、ITを取り巻く構造(の違い)もある」と整理した。その上で「ある程度荒削りの状態で、Now Platform活用を通して業務用ソリューションを提供し、ユーザーからのフィードバックを受けて速やかにそれを修正するといったアジャイル型の改善アプローチに対して、日本企業はもう一歩取り組みを進めていく必要がある」と指摘した。
(訂正と更新)記事公開当初、「Utahが搭載する主な新機能は次の7つだ」としていましたが、Process OptimizationとWorkforce OptimizationはUtahよりも前のバージョンから存在している機能の拡張版であるとの指摘をServiceNowから受け、「Utahが搭載する主な新機能、拡張機能は次の7つだ」に修正しました。本文は修正済みです(2023年4月19日18時40分更新)。
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