「生成AI」を自動化に活用 Automation Anywhereの3つの新サービス
生成AIのビジネスでの活用に向けた動きが活発だ。オートメーション・エ二ウェア・ジャパンが語る、生成AIを活用する自動化の今後の展望と、生成AIを活用する上で注意すべき4点とは。
オートメーション・エニウェア・ジャパンは2023年6月23日、生成AI(人工知能)を活用する3つのサービス発表に伴う説明会を実施した。
オートメーション・エニウェア・ジャパンの由井希佳氏(カントリーマネージャ)は、生成AIのインパクトについて「2023年は生成AIによって大きな転換期に入った年として記憶に残るのではないか。生成AIの可能性を最大限に活用することで、企業は生産性向上を実現できる」と話した。
企業が利用しているさまざまなアプリケーションに生成AIを組み込むことで自動化はどのように変化するのか。3つのサービスから見ていく。
生成AIを活用する3つの新製品
Automation Anywhereは2003年に創業し、2018年に日本法人であるオートメーション・エニウェア・ジャパンを設立した。2019年からクラウドネイティブのRPAプラットフォーム(RPAaaS《RPA as a Service:サービスとしてのRPA》)を提供している。
由井氏は同社が提供するサービスが、「単一のタスクを対象としたRPAから、複数のアプリを利用する一連のプロセスを対象としたインテリジェントオートメーションへと成熟してきた」と振り返った上で、「今後は生成AIを活用することで議事録の作成や契約書の要約をこなすような高度な専門化が実現する」と強調した。
生成AIの活用に当たって同社が打ち出すのが、2022年にリリースした自動化アシスタント「Automation Co-Pilot」だ。Microsoftが発表したAIアシスタント「Microsoft 365 Copilot」との違いについて、由井氏は「Microsoft Copilotは文書作成などに利用されるオフィスワーカー向けの機能で、Automation Co-Pilotはエンドツーエンドのビジネスアプリケーションの自動化を目的とした機能だ。あらゆるWebアプリからプロセスをシームレスに連携する」と整理した。
Automation Co-PilotはAutomation Anywhereが次世代自動化プラットフォームと位置付ける「Automation Success Platform」で活用されている。各種アプリケーションの中に埋め込まれたAutomation Co-Pilotをクリックすることで自動化を連携できる。「まさにわれわれの“副操縦士”となるような機能だ」(由井氏)
Automation Anywhereは、Automation Co-Pilotと生成AIを組み合わせることで、さらにスピーティーに自動化を実施できるとしている。
Automation Anywhereが今回発表した3つのサービスは以下の通りだ。
- Automation Co-Pilot+生成AI for Business Users:ビジネスユーザー向け(リリース開始)
- Automation Co-Pilot+生成AI for Automators:自動化開発者向け(2023年後半にリリース予定)
- Document Automation+生成AI:文書の理解、抽出、要約(2023年7月プレビュー版提供予定)
1はAutomation Co-Pilotに生成AIを搭載することで、エンドツーエンドのプロセスの中でコンテンツを生成し、情報の要約から抽出までをカバーする。
2の対象は市民開発者からプロの開発者まで幅広く想定されている。生成AIを利用することで自然言語によって自動的にプロセスやbotを作成できる。自然言語を利用することで高速化を図る。
3は定型、準定型のデジタル化に加えて、増え続ける非構造化ドキュメントからデータを迅速に理解し、抽出、要約してデータをプロセスワークフローに自動で組み込む。ドキュメントを要約して、迅速な意思決定を支援する。
「これまでは注文書などの固定帳票しか自動化に対応していなかったが、生成AIを利用することで契約書や電子メールといった非定形文、長文を生成できる」(由井氏)
気になる日本語対応については、Automation Co-Pilot+生成AI for Business Usersは対応済み、Automation Co-Pilot+生成AI for Automatorsは当面は英語版のみで日本語を含む他言語は順次対応予定、Document Automation+生成AIは一部は対応済み、残りの部分に関しては2023年中の提供を予定しているという。
業務の流れ、スピードはどう変わる?
では、生成AIがアプリケーションに搭載されることで、業務の流れはどう変わるのだろうか。
コンタクトセンターを例に「フライトが大幅に遅延してオンラインで苦情を申し立てている顧客」への対応を想定した業務フローが紹介された。
従来、顧客から苦情を受けたサポート担当者が実施してきたのは次の6ステップだ。
- 顧客の苦情の内容を確認し、顧客から届いた電子メールにフライト情報が記載されていないことを発見する。「Salesforce.com」(SFDC)でケースを作成する
- 「SAP」や「Expedia」など複数のシステムにログインして、顧客のフライト情報を探す
- フライト番号の遅延コードを見つけ、SFDCを更新する
- SFDCでケースデータを確認する
- 補償内容を含む電子メールを作成する
- 電子メールの内容を確認し、必要に応じて修正した後、顧客に送信する
一方、生成AIの支援を受けて実施されるのは次の7ステップだ。
- 顧客から苦情を申し立てる電子メールが届く。顧客から届いた電子メールにはフライト情報が記載されていないことが発覚
- 生成AIがケースを分類し、電子メールから顧客データを抽出
- Automation Co-PilotがSAPなど複数のシステムから顧客のフライト番号を検索する
- Automation Co-Pilotがフライト番号の遅延コードを検出してSFDCを更新する
- サポート担当者はSFDCで完全なケースデータを確認する
- サポート担当者がAutomation Co-Pilotを使って、ChatGPTに補償を盛り込んだ電子メールの返信文の作成を依頼する
- サポート担当者が電子メールを確認し、文章表現を調整した後、顧客に送信する
なお、2〜7は全てAutomation Success Platformで実施される。
Automation Anywhereによると、AIと自動化の支援を受けない場合、サポート担当者は対応時間の60%を情報の検索に費している。顧客が苦情を申し立てた電子メールを送ってからサポート担当者から電子メールを受け取るまで、最大3時間の待機時間がかかっていた。
それに対し、Automation Co-Pilotと生成AIを利用することで、複数の作業が自動化されることから、サポート担当者の応答にかかる時間は約5分に短縮されるという。
「これまでサポート担当者は各システムにログインして、調査して検索、入力するといった労力と、精神的なプレッシャーがあった。(苦情対応にAIと自動化の支援を導入することは)従業員体験(EX)と顧客体験(CX)が同時に満たされる典型的な事例といえる。会社の信頼度と売り上げに大きく貢献し、オペレーションの変革を実現できるソリューションだ」(由井氏)
AIの責任ある活用に関する「4つの留意点」
AIの活用には利点がある一方で、さまざまな懸念点もある。企業が利用するに当たっては、プライバシー保護の必要性や、情報漏えいや知的財産権侵害のリスクが指摘されている。
由井氏は「AIによって何でもできてしまうと問題が発生する。人が判断するという『ガードレール』によって制限することが必要だ」と話し、AIを活用する上での4つの留意点を紹介した。
- 安全なモデル選択:モデルの品質とデータを保護する能力に基づいてLLM(大規模言語モデル)を選択
- ガードレール使用上の注意:Automation Co-Pilotを使用して自動化のワークフローにあらかじめ定義された入力プロンプトを提供
- ヒューマン・イン・ザ・ループ:AIが提供する出力を人間が評価、検証してその正確さを確認
- パフォーマンスモニタリング:生成AIモデルの入力と出力がログに記録されることを確認し、モデルのパフォーマンスを追跡しながら潜在的な問題を指摘
GoogleやAWSとのパートナーシップを強化
Automation Anywhereは生成AIの活用に当たってGoogleやAWS(Amazon Web Services)とのパートナーシップ強化を打ち出している。Googleとは「Google Vertex AI」を介して「Google Cloud」のLLMを活用し、Automation Success Platformに新しい生成パッケージを搭載することで自動化ユースケースを拡大するとしている。
AWSとは同社が提供するフルマネージメントサービス「Amazon Bedrock」を利用して「Amazon SageMaker」と「Foundation Model」(FM)にAPI経由でアクセスし、生成AIでデプロイの選択肢を提供することで自動化ユースケースを拡大するとしている。
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