アクセンチュアの提言から考察する 「どうすれば生成AIをうまく使いこなせるか」:Weekly Memo(2/2 ページ)
生成AIはどうすればうまく使いこなせるようになるのか。アクセンチュアの年次調査レポートから探る。
「生成AIをもっとクリエイティブなことに使え」
一方、生成AIをうまく使いこなしたいならば、2つの注意点があると山根氏は言う。
一つは、使い方だ。同氏は次のように説明した(図4)。
「図4の左のグラフは、米国人の仕事での『ChatGPT』の使用用途を調査したもので、『アイデアの生成』の割合が群を抜いて高い。右のグラフは日本人の仕事でのChatGPTの使用用途を調査したもので『ビジネスメールなどの文章の生成、校正』と『必要な情報のリサーチ』の割合の高さが目立っている。つまり、米国人は生成AIをクリエイティブなことに活用しているのに対し、日本人は定型業務の代行や情報リサーチに使っている人が多い。生成AIには生産性向上の効果ももたらすが、日本人ももっとクリエイティブなことに活用すべきではないか」
ただし、全ての人が生成AIをクリエイティブなことに活用できるかというと、そんなに甘くはないようだ。それがもう一つの注意点である、使う人の問題だ。
図5は、生成AIの使い方について、右に熟練者・プロフェッショナル、左に未経験者・初学者のケースを描いている。右の熟練者・プロフェッショナルは図にあるプロセスのように、AIと対話して自身の仮説やアイデアを抽出していく。ポイントは、生成AIがどこか間違ったとしても、熟練者・プロフェッショナルならば、それを修正する能力があるということだ。これにより、アイデアを深掘りし、アウトプットを高速で繰り返し、さらに生成AIを使いこなせるようになっていくわけだ。
一方、左の未経験者・初学者は経験が浅く知識不足からAIに頼り、生成物をうのみにしがちだ。従って、仕事も簡単な内容しかできないので存在感が乏しい形になる。さらに、山根氏は「最初は誰でも簡単な仕事から始めて徐々に力をつけていくが、そうした『育成のプロセス』が生成AIに置き換えられる可能性がある。それが広がると、未経験者・初学者にとってディストピア(暗黒の世界)になることが想像される」と指摘した。
その上で、同氏は「これからは生成AIを使いこなせる人がますます『できる人』になっていく。それに対し、使いこなせない人は逆に生成AIを活用してリスキリングに励めばよい」と語った。
この話を受けて、筆者も最後に一言述べたい。相手が人間だろうがAIだろうが、問われるのは自分の「質問力」だ。質問力はどんな仕事をしていくにも必須のスキルだ。ならば、むしろ生成AIで自らの質問力を磨くつもりで臨めばいいのではないか。そして、AIを企業にとってのデジタルバディするだけでなく、自分自身のデジタルバディにしてしまおう。時代はもう後戻りしないのだから。
著者紹介:ジャーナリスト 松岡 功
フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT/デジタル」の3分野をテーマに、複数のメディアで多様な見方を提供する記事を執筆している。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年8月生まれ、大阪府出身。
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