AIによる「意思決定の自動化」は“正しいこと”なのか? IBMの最新調査から考察:Weekly Memo(1/2 ページ)
生成AIを活用する最大のリスクは「人間が行う意思決定を委ねてしまうこと」ではないか。筆者がかねて抱いてきたこの懸念を、IBMの最新調査結果とともに考察したい。
「ChatGPT」をはじめとするジェネレーティブAI(以下、生成AI)をビジネスや業務に利用しようという企業の動きが活発化している。新たな産業革命を巻き起こすともいわれる一方で、正確性、著作権やプライバシーの保護、セキュリティなどのリスクも指摘されている。中でも、最大のリスクは「人間が行う意思決定を生成AIに委ねてしまうこと」ではないか。
生成AIが大きな可能性を持つことは間違いないが、一方で、意思決定、つまり人間の判断に関わるところで、筆者は強い懸念を抱いてきた。そんな折り、日本IBMが2023年7月26日、世界のCDO(Chief Data Officer:最高データ責任者)を対象にした調査結果を発表した。その中で「意思決定の自動化へのAI利用」に言及されているので、今回はこの話題から考察してみたい。
「データ価値創造型CDO」に共通する4つの特徴とは
日本IBMが発表したのは、米IBMのシンクタンクであるIBM Institute for Business Value(IBV)が世界30以上の国で3000人のCDOを対象に実施した調査だ。CDOについて明確な定義はされていないが、同社は「データの品質やガバナンス、戦略、管理に責任を負う経営幹部を指す」としており、日本では180人が同調査に参加した。
調査レポートは「グローバル経営層スタディ:CDOスタディ」と題して日本語版も公開されている。
日本IBMが発表と同日にオンラインで開催した記者会見では、同社の松瀬圭介氏(IBMコンサルティング事業本部データ&テクノロジー事業部 シニア・パートナー 事業部長)と、鈴木 至氏(IBMコンサルティング事業本部 データ&テクノロジー事業部アソシエイト・パートナー)が説明役を担った。
同調査によると、データ価値創造に取り組む先駆的なCDOがいる企業は、収益に占めるデータ対策費の比率を他社よりも抑えつつ、他社と同等以上のビジネス価値を創出していることが明らかになった。そうした企業の割合は、グローバルでは8%、日本では11%で、該当する企業のCDOをIBMでは「データ価値創造型CDO」と呼ぶ。データ価値創造型CDOには以下のような共通する4つの特徴があるという(図1)。
- データから価値創造に至る道筋を明確化する:組織内のデータリテラシーを高め、データの活用によってテクノロジーとビジネスの両面で成果を生み出し、企業の成長に向けたロードマップを明確に描けることを指す。
- データ投資によってビジネスの成長ペースを加速する:自社のデータ管理戦略をDX(デジタルトランスフォーメーション)に連携させている。また、意思決定の自動化にAI(人工知能)を利用しているなど、他のCDOよりAIを有効活用していることを意味する。
- データをビジネスモデルのイノベーションの中核として位置付ける:データ投資を通じて価値を創出する新たな源泉を追求し、イノベーションを促進する。また、イノベーションを進めるため、データの可視化の推進に向けてデータ実務に投資し、サイロ(化したデータ)の打破と集中型データアーキテクチャの構築に注力していることを指す。
- エコシステムパートナーとの連携を最大化する:複雑なエコシステムにおいてパートナーシップの実効性を阻害する要因を分析する。また、顧客企業とその保有データに積極的に関わることを意味する。
上記の4項目の中で筆者が注目したのは、2の「意思決定の自動化にAIを利用する」だ。ここからは、この話にフォーカスしたい。
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