生成AIの統合で何が変わる? ServiceNowが「Now Platform」の最新版「Vancouver」をリリース
ServiceNowが発表した「Now Platform」の最新版Vancouverリリースでは、セキュリティなどの強化とともに、ワークフロー全般に生成AIが統合された。独自開発の「Now LLM」もリリースされた。
ServiceNowは2023年9月20日(現地時間)、自動化ソリューションプラットフォーム「Now Platform」の最新版「Vancouver」リリースを発表した。
生成AIの統合で何が変わる?
今回のリリースで、Now Platformはセキュリティやガバナンスが強化された他、同プラットフォームの全てのワークフローに生成AIが統合された。
Vancouverでは、セキュリティ機能の拡張として、ゼロトラストのフレームワーク構築を支援する「ServiceNow Zero-Trust Access」が追加された。これはデータセキュリティソリューション「ServiceNow Vault」の機能として提供される。
サードパーティーリスク管理ソリューション「Third-Party Risk Management」の機能拡張として、外部組織からのセキュリティ脅威の可視性や管理機能も改善された。
また、調達業務の買掛金支払いプロセスを自動化する「Accounts Payable Operations」(APO)や、AIを活用した人材育成、開発ソリューション「Employee Growth and Development」(EGD)も追加された。
今回のVancouverリリースでは、Now Platformのワークフローに生成AIを組み込む機能拡張として「Now Assist」ソリューションファミリーが提供開始された。これには「Now Assist for IT Service Management(ITSM)」「Now Assist for Customer Service Management(CSM)」「Now Assist for HR Service Delivery(HRSD)」「Now Assist for Creator」の4つが含まれる。
- Now Assist for ITSM:生成AIによってITサポートを効率化し、IT部門の生産性と従業員体験(EX)の向上を支援する。インシデントの履歴や仮想エージェントとのやりとりの要約を基に、リクエストやインシデントの解決を迅速化できる。インシデントの文脈に関する要約や解決メモも作成できるため、インシデント管理のベストプラクティスを適用してインシデントの短期解決も可能になる
- Now Assist for CSM:カスタマーサービスのプロセスを効率化して生産性向上、潜在的なコストの削減や顧客体験(CX)の向上を実現する。ケースやチャットの要約を迅速に生成できるため、手作業を減らして問題を迅速に解決できる。顧客のセルフサービス体験の向上や、迅速な回答検索に役立つリソースへのアクセスなどの恩恵を受ける。これらによって顧客の自己解決率が向上し、コスト削減につながる
- Now Assist for HRSD:人事担当者が生産性と業務効率を向上させ、手作業に依存する冗長なタスクを削減し、従業員に必要な回答を迅速に提供できるよう支援する。ライブチャットや仮想エージェントとのやりとりの履歴、過去の解決策や対処に基づく要約を瞬時に得られ、大量の情報を調査することなく対応に従事できる
- Now Assist for Creator:Now Platformにおけるアプリケーション開発、拡張を支援する開発者向けソリューション。独自のコード生成テクノロジーによって出力結果は高品質で拡張性が高い設計になっている。セキュアなデータ処理も特徴だ。自然言語テキストを高品質なコード候補、あるいは完全なコードに変換する「text-to-code」が含まれている。Text-to-codeは、迅速な開発と生産性向上を実現するシームレスなコーディング体験を提供する
ServiceNowはVancouverに組み込む形で、ビジネスニーズに沿って構築した用途特化型LLMのServiceNow大規模言語モデル「Now LLM」の提供を開始した。Now LLMはワークフローやユースケース、プロセス専用に設計され、エージェントや従業員、顧客、IT管理者の固有のニーズに合わせて調整されている。,i同社はNow LLMの提供を通じて、シームレスなエンドユーザー体験や市場投入までに掛かる時間の短縮、高レベルの透明性とガバナンスを提供するとしている。
VancouverではNow LLMの他に汎用(はんよう)LLMも利用できる。現在、「Microsoft Azure OpenAI Service LLM」と「OpenAI API」にアクセスできる。
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