キンドリルの取り組みから探る「ITインフラにおけるアウトソーシングの行方」:Weekly Memo(1/2 ページ)
システムのモダナイゼーションやDXの進展に伴い、ITインフラの利用形態、とりわけアウトソーシングの在り方はこれからどのように変わるのだろうか。ITインフラサービス大手のキンドリルの取り組みから考察する。
ビジネス環境の変化に素早く対応するため、企業はシステムのモダナイゼーションやDX(デジタルトランスフォーメーション)に注力している。そのベースとなるITインフラの利用形態はどのように変わるのだろうか。どのように変える必要があるのか。とりわけ、多くの日本企業がこれまで採用してきたアウトソーシングサービスは、これからどうなるのか。
日本のITインフラ市場における4つの課題とは
この疑問に対し、ITインフラサービスを手掛ける米Kyndrylの日本法人キンドリルジャパンが2023年10月12日にオンライン開催した記者会見で、同社の問題意識と取り組みを説明した。その内容が興味深かったので、ここで考察したい。
KyndrylがIBMからITインフラサービスを引き継ぐ形で2021年9月に事業を開始したのに伴い、日本で事業を始めたのがキンドリルジャパンだ。同社社長の上坂貴志氏は会見で、「お客さまのミッションクリティカルなシステムを支える仕事を引き継いだ独立会社として、この2年間の業績は堅調に推移した。ITインフラは今、大きな転換期を迎えている。その中で、さらに貢献できる存在になりたい」と切り出した。
Kyndrylの概況は図1の通りだ。これらの実績から、ITインフラのトレンドについて同社の言動が注目されるところとなっている。
では、キンドリルジャパンは日本のITインフラ市場の課題についてどう見ているのか。上坂氏は次の4つを挙げた。
- モダナイゼーションの遅れとDXによる複雑化:基幹システムが老朽化する一方、DXによってクラウドシフト、マルチクラウド化が進み、ITインフラが複雑化している。保守・維持コストも増加している
- 設備の老朽化と最新化が必要となっている:1990年代に整備されたデータセンター設備が耐用年数を迎えるとともに、DXに備えてクラウド前提の高度化されたインフラが必要となってきている。また、エネルギーや部材の価格高騰への対応にも長期的な対応が求められている
- IT人材の不足:IT人材の中でも特にITインフラの運用を担う若手人材が不足している。人口減少に伴い、リスキリングやAI(人工知能)活用、自動化が急務となっている
- セキュリティおよび経済安全保障への対応:ビジネスを取り巻くサプライチェーンや経済安全保障、サイバーセキュリティにおけるリスクへの対応が求められている
これらの課題について、同氏は「もはやITインフラにとどまらず、社会インフラとしての課題が浮き彫りになっている」との認識も示した(図2)。
キンドリルジャパンはこれらの課題解消に向け、何に取り組むのか。上坂氏は「次世代のインフラ設備」「運用高度化を実現するプラットフォーム」「人材育成と社会への貢献」の3つを重点項目として挙げ、これらに対し、今後数年にわたって1億ドルを投資する計画を発表した(図3)。
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