生成AIを「クラウドで活用する際」の3つの勘所――AWSパートナーイベントから考察:Weekly Memo(2/2 ページ)
AWSがパートナー施策で生成AIに関する取り組みに注力している。その内容からユーザー視点で重要な「生成AIをクラウドで活用する際のポイント」を考察したい。
認定取得のNRIが見たAWS生成AIサービスの特徴
その生成AI認定プログラムのローンチパートナーとなったグローバル32社のうち、日本からは野村総合研究所(以下、NRI)が認定を取得した。今回のイベントにはNRIの大元成和氏(常務執行役員 IT基盤サービス担当)が登壇し、認定を取得した立場からAWSの生成AIサービスの特徴として次の3つを挙げた。
- 既存AWSサービスとの親和性が高い
- セキュリティの設定が容易である
- 用途に合わせて選択できる基盤モデルが多い
それぞれのポイントは図4の通りだ。言い換えると、これらの特徴を十分に生かすことがAWSの生成AI認定を取得するポイントでもある。
大元氏はAmazon Bedrockを活用した顧客事例として「内製チーム向け障害対応の効率化」および「開発業務の効率化」の2つを紹介した(図5)。前者は、内製チームの人員入れ替えが頻繁なために、障害対応のナレッジが蓄積できないという課題に対応した事例だ。後者は、AIコーディングを使って開発を効率化したいが、ソースコードをインターネットに置きたくないというニーズに対応した事例だ。
その上で、大元氏は「2024年は生成AIが“試用”から“活用”の段階に本格的に進む年になる」と強調。「生成AIの高性能化は複数の基盤モデルを簡単に取り扱える(メガクラウドベンダーの)クラウドサービスに任せ、NRIとしてはお客さまのニーズに合わせてLLM(大規模言語モデル)をファインチューニングし、特定の業務に特化したプライベートLLMを業務アプリに組み込むことで差別化や個別化、競争力向上を図っていきたい」と述べた(図6)。
以上が、今回のAWSパートナーイベントにおける生成AIの話題のエッセンスだ。ユーザー視点から重要なポイントとなるのは、NRIの大元氏が話したAWSの生成AIサービスにおける3つの特徴だ。これらは、「生成AIをクラウドで活用する際の3つの勘所」ともいえそうだ。すなわち、「使用する生成AIと既存のクラウドサービスとの親和性」「生成AIサービスとしてのセキュリティ設定の容易さ」「用途に合わせた基盤モデルを選べる」ことである。
もう一つ、大元氏の話で「プライベートLLM」という言葉が印象に残った。独自のナレッジとしてこれからの企業競争力の源泉になるのではないか。そんなことを考えさせられたAWSのイベントだった。
著者紹介:ジャーナリスト 松岡 功
フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT/デジタル」の3分野をテーマに、複数のメディアで多様な見方を提供する記事を執筆している。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年8月生まれ、大阪府出身。
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