日本企業の生成AI活用における「現在地」は? 総務省の「2024年版 情報通信白書」から考察:Weekly Memo(1/2 ページ)
生成AIの普及や活用の“現在地”はどのあたりか。日本が他の先進国よりも生成AIの業務における利用率が低いことをどう考えるべきか。総務省の「2024年版 情報通信白書」を読み解く。
新たな技術イノベーションとして注目される生成AI。その普及や活用の“現在地”はどの辺りか。総務省が2024年7月5日に発表した「令和6年(2024年)版 情報通信白書」(注1)(以下、白書)から筆者がピックアップした図を6つ紹介し、考察する。
「モノが動く業種×生成AI」にビジネスチャンスも
図1は、生成AIの世界市場規模の推移を示したグラフだ。ボストンコンサルティンググループが生成AIの世界市場規模について分析したもので、同社は2027年に1200億ドル規模になると予想している。業種別として最も大きな市場になると予測されているのは「金融・銀行・保険」で、「ヘルスケア」「コンシューマー」と続く。
白書は生成AIについて、「人類史上有数の革命といっても過言ではない。企業がセキュリティリスクを恐れて活用しないことこそが最大のリスクだ。むしろ自社が次の時代の生成AIファースト企業になるつもりでAI活用を進めていくべき」と記している。
図1のグラフで筆者が注目したのは、業種別として「製造業」や「流通・小売」が見当たらないことだ。すなわち、モノが動く業種と生成AIの掛け合わせによって大したことは起こらないというのが分析者の見立てということだ。だが、逆転の発想はないか。そこに新たなビジネスチャンスがあるような気もする。
図2は、5カ国の国民による生成AIの利用経験を示したグラフだ。総務省が日本や米国、中国、ドイツ、英国の国民を対象に、生成AIを含むデジタル技術の利用状況などを尋ねたアンケート調査によると、生成AIを「使っている」(「過去使ったことがある」も含む)と回答した割合は日本で9.1%と、他国に比べて低かった。
確かに図2のグラフによると、日本の利用率は他国に比べて低い。だが、日本は新しい技術に対して当初は慎重な姿勢を取ることが多いものの、メリットを理解して使い始めれば普及のスピードは速い。それほど憂慮する必要はないだろう。
図3は、国内のアンケートで生成AIの利用意向をまとめたグラフだ。「既に利用している」と回答した割合は低いものの、「ぜひ利用してみたい」「条件によっては利用を検討する」と回答した割合は6〜7割程度あり、白書では「潜在的なニーズがあることがうかがえる」との見方を示した。
図3のグラフについては、利用形態の項目として一般的なものが列記されているが、業務利用の観点からすると、最下段の「AIを活用して制作への改善点やアドバイスを受ける」という使い方がうまくできるようになれば、生成AIは「Copilot」(副操縦士)にも「Buddy」(相棒)にもなるだろう。
図4は、業務における生成AIの活用状況を示したグラフだ。企業を対象としたアンケート調査で生成AIの活用が想定される業務ごとに活用状況を尋ねた設問に対し、「電子メールや議事録、資料作成などの補助」に生成AIを使用していると回答した割合は、日本で46.8%(「業務で使用中」と回答した割合)であり、他国と比較すると低い。
「トライアル中」までを含めると、米国やドイツ、中国の企業は90%程度が使用している。白書は、「海外では顧客対応などを含む多くの領域で積極的な活用が始まっている一方、日本企業は社内向け業務から慎重な導入が進められていることが分かった」としている。
図4のグラフを見ると、業務における生成AIの活用においても日本が後れを取っているようだ。業務アプリケーションに生成AIが組み込まれた形で広く使われるようになるのはこれからなので、図2と同じくこちらもそれほど憂慮する必要はないと筆者は考えている。
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