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VMwareの料金体系変更をめぐる裁判の行方 Broadcomの“言い分”は? CIO Dive

VMwareの製品ラインアップや料金体系の変更による動揺が収まらない中で、ユーザー企業がBroadcomを相手に訴訟を起こした。裁判で明らかになったBroadcomの「言い分」は。

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 BroadcomがVMwareを2023年11月に610億ドルで買収してから1年が経とうとする今、VMwareユーザーは難しい選択を迫られている。変更後の料金体系に同意するか、別のプラットフォームに移行するか、あるいは既存のVMwareのソフトウェアやシステムを利用しながら、サードパーティーの技術的支援を受けるか――。

 こうした中、VMwareの顧客企業がBroadcomを相手取って起こした訴訟が注目されている。なぜ顧客企業はBroadcomを訴えたのか。また明らかになったBroadcomの言い分とは。

VMwareの料金体系変更をめぐる「Broadcomの言い分」

 Broadcomは2024年9月20日(現地時間、以下同)、通信大手AT&Tが同社の「VMware」に対して起こした差止請求を、米ニューヨーク州最高裁判所に提出した覚書で退けた(注1)。AT&Tは、買い切り型のVMware製品に対するサポートを当初の契約通り継続するようBroadcomに求めている。BroadcomはAT&Tに対し、以下のように反発した。

 「AT&Tは長期にわたって計画されて周知されていたビジネスモデルの移行について事前に十分な警告を受けていたにもかかわらず、VMwareのサポートを受けられなくなったと主張している」

 さらにBroadcomは、「AT&TはVMwareが提供するソフトウェアから他社のソフトウェアに移行するための猶予が数カ月、あるいは数年あった。AT&Tは実際に移行する意思を示していた」と述べる。

 Broadcomのランドール・グレセット氏(VMware米国戦略営業担当バイスプレジデント)は、2024年9月20日に提出した宣誓供述書で「AT&Tは交渉の過程で、VMware製品群からの移行を計画していることとVMwareに頻繁(ひんぱん)に伝えていた」と述べた(注2)。同氏は、AT&Tが2024年8月19日にBroadcomのホック・タンCEOに送った電子メールを引用し、AT&TがVMwareの新規サブスクリプション契約を辞退し、VMware製品群からの移行を希望していたことを明らかにした。

 2023年11月にBroadcomがVMwareを610億ドルで買収してから1年が経とうとしている中、ユーザーは難しい選択を迫られている。サブスクリプションモデルを採用したVMware製品群の新しいライセンス体系に同意するか、別の仮想化コンピュート環境に移行するか、既存のデプロイメントにおけるサードパーティーのサポートを見つけるかという選択だ。

 AT&Tは2024年9月初め、こうした変更に対して法的に異議を申し立てた(注3)。

 AT&Tは、「不要なサブスクリプション契約に何百万ドルも費やすことに同意しない限り、Broadcomは以前購入した永久ソフトウェアライセンスの条項を守らないつもりだ」と主張している。

 2024年9月20日、Broadcomはこれに対して次のように反論した。

 「AT&Tは、VMwareが製品ラインから廃止した『永久ソフトウェアライセンスのサポートサービス』の販売を強要しようとしているが、同社にはこれを購入する契約上の権利がない。AT&Tは話を過去に戻そうとしている」(Broadcom)

 一方、裁判資料によると、BroadcomはAT&Tが利用するVMware製品群に対するサポートを2024年10月21日まで延長することに合意している。AT&Tによると、サポートが延長されなければ、約8600台のサーバで稼働している7万5000台以上の仮想マシンのサポートは、2024年9月8日に終了する予定だった。

 2023年11月の買収後、VMwareの製品ラインアップは大きく変化したが、Broadcomは「この変化は何年も前から起きていた」と述べた。

サブスク料金への移行は、VMware時代から予定されていた?

 「2018年以降、VMwareは製品のライセンス体系を一括購入型からサブスクリプションモデルに移行する戦略的計画を開始していた」とBroadcomは述べ、VMwareが2022年第2四半期の決算説明会で経営幹部が移行について言及したことを明らかにした。

 「Broadcomによる買収のずっと前から、VMwareが永久ライセンスからサブスクリプションベースの料金体系への移行を公表していたのは業界ではよく知られていた」(グレセット氏)

 VMwareは2024年1月15日の同社ブログの投稿記事で、必要な機能をオプション形式で購入するアラカルト型の「VMware vSphere」ソリューションがサブスクリプションバンドルに統合され、単独使用が可能なスタンドアロン製品として提供されなくなることを顧客に警告した。ただし、その記事は1週間後に「特定のVMware製品の提供終了に関するコミュニケーションを明確にするために」修正された(注4)。

 買収後のライセンス体系変更により、168の個別製品と約9000のスタンドアロン型のライセンス商材が「VMware Cloud Foundation」(以下、VCF)のフルスタック製品とVMware vSphereの仮想環境の2つの大きなバンドルに集約された(注5)。

 Broadcomは、SaaS(Software as a Service)製品をバンドル化することは業界の標準的な慣行であり、企業のクラウド導入に必要な対応だと主張する。

 「VMwareは、特にパブリッククラウドとの競争が激化しており、オンプレミスサービスとしての地位が低下している。パブリッククラウドからの競争圧力により、VMwareはBroadcomによる買収よりもはるか前からVMware Cloud Foundation(VCF)製品を開発していた。これらの製品は顧客全体に導入、展開されていた」(グレセット氏)

コスト500%増との報告も 半数が「乗り換え」意向

 Broadcomはこれらの戦略によってコスト削減の可能性を宣伝していた。しかし、調査会社のForrester Researchによると、一部の顧客は「コストが500%も増大した」と報告しているようだ(注6)(注7)。クラウドプロバイダーでありVMwareの競合でもあるCivoが、現在または直近でVMwareを利用した経験のあるユーザー1000人を対象に実施した最近の調査では、VMwareプラットフォームからの移行を検討している割合が半数以上を占めることが分かった。

 BroadcomはVMwareを統合するに当たり、顧客からのフィードバックに耳を傾け、「顧客がVCFを導入する全ての段階でその価値を示せるよう、段階的なアプローチを取っている」と、プラシャンス・シェノイ氏(VCF事業部製品マーケティング担当バイスプレジデント)は2024年6月の説明会で述べた。

 AT&Tは2024年9月27日までに、仮差止命令を求める動議に関連する追加書類を提出する予定だとしている。2024年9月23日に送信した「CIO Dive」の電子メールに対して、同社はこれ以上のコメントを控えた(注8)。

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